『 青春歌年鑑('75-1 ) 』

〜 「シクラメンのかほり」から「夏ひらく青春」まで 〜


1 シクラメンのかほり / 布施明
2 昭和枯れすすき / さくらと一郎
3 想い出まくら / 小坂恭子
4 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ / ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
5 カッコマン・ブギ / ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
6 心のこり / 細川たかし
7 我が良き友よ / かまやつひろし
8 冬の色 / 山口百恵
9 スモーキン’ブギ / ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
10 「いちご白書」をもう一度 / バンバン
11 私鉄沿線 / 野口五郎
12 いつか街で会ったなら / 中村雅俊
13 やすらぎ / 黒沢年男
14 面影 / しまざき由里
15 夏ひらく青春 / 山口百恵
16 恋の暴走 / 西城秀樹
17 木枯しの二人 / 伊藤咲子
18 学校の先生 / 坂上二郎
19 年下の男の子 / キャンディーズ
20 裏切りの街角 / 甲斐バンド
21 誘われてフラメンコ / 郷ひろみ
22 雨だれ / 太田裕美
23 酒場にて / 江利チエミ
24 夢よもういちど / 真木ひでと
25 今はもうだれも / アリス
26 みかん色の恋 / ずうとるび
27 純愛 / 片平なぎさ
28 バンプ天国 / フィンガー5
29 サボテンの花 / チューリップ
30 乙女のワルツ / 伊藤咲子


 1975年、元号に直すと昭和50年。さば君は誕生日が来て7歳ということになります。そろそろ分別が付き始めて、ゴミの分別くらいは出来るようになる年頃でありますが、いや、鍋焼きうどんの容器は燃えるゴミか、燃えないゴミか?…といった難しい問題になると、オトナの判断を仰がなければならないんですけどね。で、この年にはどんな出来事があったのかと言うとですね、まずはえーと、日本赤軍がマレーシアの米国大使館を占拠。超法規的措置で、日本に投獄中のメンバー5人を釈放。…というのがあります。よく耳にしますよね、超法規的措置。もしこの頃に流行語大賞があったら間違いなく上位にランクインしていたと思いますが、当時まだ7歳だった少年にはこの言葉は難しすぎて、超ホーキって、もの凄くゴミがよくとれる掃除道具ぅ?…くらいの認識しかありませんでした。いっしょうけんめい掃除をしてくれて感心だから、釈放してあげようね。…みたいな。日本赤軍というのは綺麗好きの集団なんだという誤った認識を持ったまま僕は大人になってしまったんですが、あとはえーと、東京江戸川区で六価クロム禍ですか。この六価クロムというのも当時のコドモにはちょっと難し過ぎますよね。もっとも、オトナになった今でもまったく意味はわからんのですが、とにかくまあ、六角形をしたものなんだろうなという事は何となく想像が付くんですけどね。

 で、この時代の空気をもっともよく現しているのが “サイゴン陥落でベトナム戦争が終結” と、 “GNPが0.6%減少、高度成長時代が終わる” という2つのニュースでありまして、そうですかー。高度成長時代、終わってしまいましたかー。7歳という育ち盛りに高度成長時代が終わってしまったので、僕の身長は今ひとつ伸び悩んでしまったんですが、そうですかー。ベトナム戦争が終結しましたかー。僕はベトナム戦争に関してはまったく何の知識もなくて、ベトコンと呼ばれる人達がベトコンズボンを穿いて、ベトコンラーメンを食べていたんだよね。…ということくらいしか知らないんですが、 青春歌年鑑 に収録されなかたったこの年のヒット曲としてはですね、次のようなものがあります。

  時の過ぎゆくままに / 沢田研二
  ロマンス / 岩崎宏美
  22才の別れ / 伊勢正三
  十七の夏 / 桜田淳子
  時代 / 中島みゆき
  なごり雪 / イルカ
  となりの町のお嬢さん/よしだたくろう
  無縁坂 / グレープ
  石狩挽歌 / 北原ミレイ

 いや、豊作ですなー。全体として、演歌・歌謡曲が衰退して、フォークニューミュージックニシンの時代が来たな。…といった感じなんですが、いや、ニシンと言うのは北原ミレイの 「石狩挽歌」 なんですけどね。これからはニシン歌謡曲が世界を席捲するんぢゃないか?…という僕の予想とは裏腹に、このジャンルはこれ1曲だけでポシャってしまいましたが、この中からどれか1曲だけを選ぶとなれば、僕の場合は断然、 「無縁坂」 でありますな。この歌を耳にするとしみじみ、高度成長時代は終わってしまったんだなぁ。…と、暗い気持ちになれることは請け合いでありまして。

 ということで、では本編のほうを聴いてみることに致しましょう。

 えーと、まずは布施明「シクラメンのかほり」 (作詞・作曲:小椋圭) ですか。いきなり面白くない歌が出てきましたね。生理的にどうも好きになれんのですよね、布施明も、小椋圭も、 「シクラメンのかほり」 も。 “かほり” なんて、気取ってんぢゃねえ!…と思ってしまうんですよね。 歌詞もよくありません。 まわた色したシクラメンほど、すがしいものはない♪…というのが歌い出しなんですが、何なんですかね、 “まわた色” って。 “まわし色” だったら力士によって濃紺だったり、茄子紺だったり、銀ねずだったりするんですが、まわた色というのは聞いたことがありません。…と思って調べてみたところ、どうやら漢字では真綿色と書くようなので、恐らく綿のように白い色ということなんでしょうね。ただ綿というのは鼻血が出たときに花の穴に詰めたりすると赤くなるし、化膿した傷口に当てたりすると黄色く膿色に染まったりするので、具体的にどんな色とは言えないような気もするんですけどね。 でまた、 “すがしい” という言い方もあまりよくありません。どこまでが苗字で、どこからが名前なのか、はっきりしろ、スガシカオ!…と言いたくなってしまいます。 とまあそんなことで、あまり好きな歌ではないので深入りしないことにして…と。

 2曲目、さくらと一郎「昭和枯れすすき」 (作詞:山田孝雄/作曲:むつひろし) 。 いや、一転してこれまた素晴らしい歌が登場しましたな。この時代 “さくら” と言えば横峰さくらでも、寅さんの妹でもなく、さくらと一郎のさくらだったんですよね。 で、この時代“一郎” と言えばマリナーズのイチローでも、鳥羽一郎でもなく、さくらと一郎のさくらだったんですよね。 そんなさくらと一郎のグレイテスト・ヒットがこの 「昭和枯れすすき」 であるわけですが、(男)貧しさに負けた (女)いいえ世間に負けた (男)この町も追われた (男女)いっそ綺麗に死のうか♪…という歌詞は、高度経済成長の終焉で元気を無くしかけていた当時の日本国民に明るい希望の光を与えてくれたものであります。うちの会社もすっかり景気が悪くなっちゃったけど、ま、さくらと一郎よりはマシかぁ。…みたいな。ちなみにこの歌の音楽的な意義としてはですね、演歌では不可能と言われたハーモニーをつけ、新しいパターンの歌唱法を生み出した。…というところにあるようですが、何も2人でハモってまで、こんな暗い歌を歌わなくても。…という気がしないでもありません。

 で、続きましては小坂恭子「想い出まくら」 (作詞・作曲:小坂恭子) ですか。小坂恭子というのが一体どういうギャルなのか、日本の歌謡曲事情にはまったく詳しくない僕にはさっぱり分からんのですが、1974年の第7回ヤマハポプコンで、 「恋のささやき」 という歌でグランプリを受賞したんだそうで。いや、懐かしい響きですねぇ、ポプコン。 僕が小学生だった頃、世の中の男児は歌謡曲好きのポプコンと、テレビ番組好きのロボコンと、小学生の女の子好きのロリコンに大別することが出来たんですが、僕は歌謡曲にはあまり興味がなかったので、 「恋のささやき」 という歌はまったく知りません。で、この 「思い出まくら」 という歌もまったく聴いたことはなかったんですが、なかなかいいんですよね、これがまた。

 こんな日はあの人の真似をして 煙たそうな顔をして煙草を吸うわ
 そういえばいたずらに煙草を吸うと やめろよと取り上げてくれたっけ♪

 そういえば僕も昔、いたずらに煙草を吸ったことがあるんですが、やめろよと言われたことがありました。いや、長島温泉ジャンボ海水プールの監視員のアルバイトをやっていて、休憩時間に煙草を吸っていたら、社員のおっさんから 「似合わないからやめろ。」 と言われたんですよね。 僕は大いに傷付いて、以来、きっぱりと禁煙してしまったんですが、そう言えば社会人になってサングラスをかけてクルマを運転していた時にも社員のおっさんから 「似合わないからやめろ。」 と言われたことがありましたな。ジャズが好きと言っても似合わないと言われるし、ウインドサーフィンやってるんだぁ。…言っても、うっそー。おたく、そういうふうには見えないしぃ。そういうタイプじゃないしぃ。似合わないしぃ。…って、人がどんな趣味を持っていようが、大きなお世話やん!…と思わずにはいられませんが、恭子ちゃんの場合は似合わないから煙草をやめろと言われたわけではなくて、カラダに悪いからという理由で彼から取り上げられちゃったんでしょうね。

 いたずらに煙草を吸うことによって、愛されている自分を確かめる。そんな意味合いがあったんだと思いますが、そんな優しい彼と別れてしまって、今はただ、その思い出に浸っている…と。 非常にウェットで歌謡曲的な内容であると言えますが、メロディのほうは微妙にニューミュージック的であったりします。特にサビの部分がいいですね。 ねえあなたここに来て楽しかった事なんか話してよ、話して〜よ♪…と、畳み掛けるように歌うところなど、心の高ぶりが感じられる寒ブリ。…といった感じで、秀逸です。 ちなみにこの歌に関しては ここ にとっても面白いレビューがありましたので、詳しくはそちらを見て下さい。僕なんかがあれこれ言うよりもよっぽど参考になると思います。

 次です。ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」 (作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童) 。 いや、これまた懐かしいですなぁ。今回のラインナップの中で子供たちの間でいちばん評判がよかったのはこの1曲であると言えましょう。 あんた、あの娘のなんなのさ?…でありますな。 が、この台詞と、港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ〜♪…というところ以外はまったく記憶に残っておりませんで、果たしてどんな歌だったのか?…と思って聴いてみたところ、その正体が判明しました。ほとんどそれだけの歌だったんですな。 ちょっと前なら覚えちゃいるが、一年前だとちとわからねぇな♪…で始まるしゃべりのパートがずっと続いて、あんた、あの娘のなんなのさ?…の決め台詞があって、港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ〜♪…のところにだけメロディがついていて、以下、それの繰り返し。いや、何とも斬新な構成であると言えましょう。 ストーリーとしては、1年前に姿を消した “港のヨーコ” の消息を辿って、ヨコハマからヨコスカ界隈をさすらうといったところでしょうか。ヨコハマ、ヨコスカだから、ヨーコ。そのあまりにも安易な発想が逆に大ブレイクにつながったと言えるでしょう。横浜、横須賀というお洒落感のある地名も絶妙ですよね。同じ韻を踏むにしても、港のリョーコ、両国、遼寧省〜♪…では今ひとつパッとしませんからね。歌いにくいし、遼寧省では遠すぎてリョーコを探しに行く気にはなれないしー。

 で、ダウン・タン・ブギウギ・バンドが2曲続けて登場ということになるんですが、続いては 「カッコマン・ブギ」 (作詞:奥山恍伸/作曲:宇崎竜童) という曲ですか。 銀座・原宿・六本木 バギー・トップにヒップボーン カッコマーン なりたくって〜 カッコマーン なりきれない カッコマーン なりきれなきゃ それが悩みのタネじゃ〜ん♪…って、なんともダサダサの歌なんですが、それが悩みのタネじゃ〜ん♪…というところの歌い方が何とも可愛らしくて、思わず母性本能をくすぐられちゃうのぉ♪…というギャルは少なくないと思います。 いや、僕には母性はなくて、ただ女子高生のパンツを見たいという本能があるだけなので、つまらない歌やなと思うだけなんですけどね。ただ楽曲的には確かにブギウギしておりますので、その意味では実に下町ブギウギ楽団らしい歌ではあるな。…ということは言えると思うんですけどね。

 で、6曲目はムードが一転して、細川たかし「心のこり」 (作詞:なかにし礼/作曲:中村泰士) 。 演歌の人気が凋落傾向にあったこの時期において、細川のたかし君というのは意外と子供にも人気がありました。少なくとも立花隆よりは人気がありました。 “たかたかし” というのは名前が韻を踏んでいるところから子供たちの間でもそれなりに知名度があったんですが、立花隆の場合は何らアピールするものがありませんもんね。 で、この 「心のこり」 という歌はタイトルを見てもあまりピンとこないかも知れませんが、わたし馬鹿よね〜、お馬鹿さんよね〜♪という歌だよね。…と言えば、誰もがご存知のことと思います。 この歌を知らないような若いギャルはうちのサイトでは想定外ですからね。この歌をよく知っている若くないおっさんというのは、出来ればあまり相手にしたくないところなんですが、排除してアクセスカウンタが伸び悩んだりしても癪なので、ここに来てもらっても構わないんですけどね。ま、必要悪というか、枯れ木も山の賑わいというか。 いずれにせよ、僕は演歌系の歌というのは出来ればエンガチョしたいところでありますので、たかし君について言いたいことは、こんだけ。

 7曲目、 かまやつひろし「我が良き友よ」 (作詞・作曲:吉田拓郎) 。 あ、吉田拓郎の作詞・作曲だったんですな、これ。 言われてみれば確かに限りなく拓郎っぽい歌ではありますよね。 下駄を鳴らしてヤツがくる 腰に手ぬぐいぶら下げて 学生服にしみこんだ 男の臭いがやってくる〜♪…って、今どきそんなヤツ、こーへんやろ?…という気がするんですが、昭和50年当時にはやって来ることもあったんでしょうな、こんなキャラが。まさに昭和レトロといった感じなんですが、こういう学生のことを “ボンクラ” と言うんでしたっけね? いや、違いますね。 “バンカラ” ですよね。 バンカラというのはハイカラから派生した言葉でありまして、高い(ハイ)襟(カラー)の学生服に対し、野蛮(バン)な襟(カラー)の学生服を愛用する一群のことを言うんですが、ちなみに僕はハイカラもバンカラも好きではなくて、インパラが好きだったりするんですが、いや、アレはいいですよね、ウシ科の哺乳類。 何がいいのかと言うと、何となく “淫乱パラダイス” の略称を思わせるインパラという名前にソソられるものを感じてしまうんですが、それはそうとムッシュかまやつはどうして、ムッシュというんですかね? かまやつひろしなんだから、ヒロッシュかまやつでいいぢゃないか?…という気がするんですが、どうしてもヒロッシュでは嫌だという、自分なりのこだわりがあるんでしょうかね? …という問題はさておいて、この歌はですね、メロディがいいですよね。 あー、夢よ、よき友よ おまえ今頃どの空の下で 俺とおんなじあの星みつめて何想う♪…と、畳み掛けるように歌うところなど、心の高まりが感じられる藤原鎌足。…といった感じで、秀逸です。

 次。山口百恵「冬の色」 (作詞:千家和也/作曲:都倉俊一) 。 百恵ちゃんの歌の中ではまったく記憶に残っていない1曲でありまして、以前に書いた 山口百恵特集 でも、知らんもん、そんな歌。…の一言で片付けられております。彼女がデビューして初めてオリコンチャートの第1位に輝いたのがこの曲なんだそうでありまして、ヒットしたことは間違いないようですが、実際に聴いてみたところ、清純派の系列に属する作品でありました。 「ひと夏の経験」 でオトナの女に脱皮した百恵ちゃんでありますが、どうやら援交目的のおっさん (←たぶん) とは、別れちゃったみたいですね。で、今度は前のオトコのような遊び人ではなく、原理主義者と言ってもいいほど堅いキャラであるようです。

 あなたから許された口紅の色は からたちの花よりも薄い匂いです くちづけもかわさない清らかな恋は 人からは不自然に見えるのでしょうか〜♪ 清らかな恋。いいではありませんかー。元来、清純派の女子高生というのはかくあるべきだと思います。 「ひと夏の経験」 はあまりよい結果にはならなかったようで、一転してお堅い男に鞍替えしちゃったわけですね。ま、口紅の色までいちいち注文を付けるというのは、どうか?…という気がしないでもないんですが、あなたなら中のいい友達にさえも微笑んで紹介が出来る私です♪…って、前のオトコはとても友達に紹介出来ないような酷いヤツだったんでしょう。縁が切れて何よりです。

 9曲目、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「スモーキン’ブギ」 (作詞:新井武志/作曲:宇崎竜童)。 初めて試した煙草がショート・ピース すー、ぱっぱっ♪ 親父の真似して気取ってちょっとポーズ すー、ぱっぱっ♪ やはり不良の少年にとって煙草というのは必須アイテムですからね。ちっとも不良ではなく、むしろ優良だった僕もそれなりに憧れたものでありますが、似合わないからやめろと言われて、きっぱりと足を洗ったのは前述の通りです。しかしこの歌はアレですな。むっちゃブギウギしてますよね。 「カッコマン・ブギ」 のブギウギしておりましたが、この曲も負けず劣らずブギウギしております。 というか、一緒の曲ちゃうか?…と思ってしまうほどメロディが酷似しているんですが、ま、ブギウギなんてものはどれもこれも似たようなものなんですけどね。それにしてもダウン・タウン・ブギウギ・バンド、この年だけで3曲も歌年鑑入りするとは、人気絶頂でありますなぁ。

 僕の叔父のヒロシ君 (←八百屋経営) には娘が2人、息子が1人おりまして、家が近くだったので同じ小学校に通っていたんですが、長女は僕よりひとつ年上でありました。その彼女は学校で “バンバン” と呼ばれていたんですが、その謂れはですね、不明です。言いたいことをバンバン言うタイプの気の強いギャルでしたので、あるいはそこから来ているのか?…というのが僕の推測なんですが、一方、 「“いちご白書”をもう一度」 を歌っていたバンバン。こちらのほうの名前の由来は明確です。ばんばひろふみが結成したバンドだから、バンバン。ばんばひろふみが結成したバンドだから、ヒロフミンでもいいんじゃないか?…という気もするんですが、ばんば君は苗字のほうを採用したようですね。ちなみに、ばんばひろふみの本名は馬場弘文なんですが、どうして “ばんば” と真ん中に “ん” を入れたのかというと、関西ではウンコのことをババというので、その語感を嫌ったのでしょう。京都出身らしいので子供の頃はこの苗字で虐められたに違いないですからね。

 で、この 「“いちご白書”をもう一度」 でありますが、これは名曲です。今の耳で聞いてもやっぱり名曲だと思います。青春の甘さとほろ苦さを感じさせる歌詞と、叙情的なメロディ。そして何より、 「“いちご白書”をもう一度」 というタイトルが素晴らしいですよね。 そもそも 「いちご白書」 というのがどういうものなのか、当時コドモだった僕にはよくわからなかったんですが、当時、ハクション大魔王が好きだった僕にとって “白書” という言葉は、すっと受け入れられるものでありました。 そっか! 「いちご白書」 というのは映画のタイトルだったのか!…ということが分かったのは、もう少し大人になって、歌詞の意味が理解出来るようになってからだったんですが、哀しい場面では涙ぐんでた 素直な横顔が今も恋しい♪…というところが僕は好きです。僕もテレビで 「ドラえもん」 とかを見ていて感動的な場面があったりすると、思わず目頭が熱くなってウルウルしちゃいますからね。そういう素直なギャルというのは大変に愛しいと思います。で、曲のほうでは、雨に破れかけた街角のポスターに 過ぎ去った昔があざやかに甦る♪…というサビのフレーズが群を抜いて抜群でありまして、いや、ばんばひろふみ君もいい歌を作りますなぁ。…と思っていたら、作詞・作曲が荒井由美だったんですね。ちっとも知りませんでした。 で、いい歌なのもそれで納得。だよねー。ばんば君にこんないい歌、作れるわけがないよねー。

 いい歌と言えば、野口五郎「私鉄沿線」 (作詞:山上路夫/作曲:佐藤寛唄) だって負けておりません。野口五郎という人は新御三家の中でもいちばん脚が短いよね。…というイメージしかなくて、コドモ時代の僕にとってはまったく印象の薄いキャラなんですが、大人になって改めて聴き直してみると、一番まともな歌を歌っていたんですね。歌唱力も抜群です。 で、この 「私鉄沿線」 というのも、まずタイトルが素晴らしいと思うんですが、地方の出身者にとって私鉄というのは憧れの的でしたからね。いや、桑名には近鉄という立派な私鉄が走っていて、僕もれっきとした私鉄沿線の住民でありますので、別に羨ましくはないんですが、ここで言う私鉄沿線というのは恐らく東急の東横線でありましょう。 改札口で君のこと いつも待ったものでした 電車の中から降りて来る 君を探すのが好きでした♪…という歌詞の舞台が京浜急行の青物横丁駅だったりしたら、イメージ台無しですもんね。 それはそうとこの歌、メロディの感じが微妙に 「あずさ2号」 していると感じるのは僕だけでしょうか?

 で、12曲目は中村雅俊「いつか街で会ったなら」 (作詞:喜多條忠/作曲:吉田拓郎)。あ、これ、吉田拓郎の作曲だったんですね。言われてみれば確かに、もの凄くそんな感じがします。もの凄くそんな感じはするんですが、中村雅俊の歌って、カラオケで歌ってもちっとも盛り上がらないよね。…という気がしないでもなくて、宴会の席で 「ふれあい」 とか歌うなよ!…と、思わずにはいられません。でもまあ、根が暗い僕のキャラにはよくマッチしているような気もして、奮起して、君はファンキーモンキーベイベー♪…とか歌ってみたところで、似合わないとか言われて、それで終わりのような気がしますからね。 何気ない毎日が風のように過ぎてゆく この街で君と出会い この街で君とすごす〜♪ うん、地味でいいかも知れません。今度、チャレンジしてみましょうかね?

 さ、残すところあと3曲です。黒沢年男「やすらぎ」 (作詞・作曲:中山大三郎) 。黒沢年男といえば、 「時には娼婦のように」 というスケベ歌謡曲を歌っていたスケベな中年というイメージしかないんですが、そうですか、 「やすらぎ」 ですか。 あなたがその気なら仕方がないわねと お前はうつむいて静かに背をむけた♪…って、いや、歌詞も曲調も見事なまでにド演歌でありますな。演歌にあまり青春を感じる人はいないと思うので、例えヒットしたものでもこの手の歌は 『青春歌年鑑』 から抹消したほうがいいんぢゃないか?…と思うんですが、いや、もしかしたら 「アタイの人生はトシオと一緒にあったようなもんだよ。」…という当時のギャルがいないとも限らないので、何とも言えないんですけどね。黒沢年男、けっこう渋いキャラですからね。同年代の男の子が子供っぽく思えて渋い中年の男性に惹かれる若いギャルというのはいつの時代にも必ず存在します。僕も今では中年と呼ばれるのに何ら遜色のない年齢になって、そういう趣向の若いギャルが寄ってこないものかと大いに期待しているんですが、僕の場合はちっとも渋くない中年になってしまいましたからなぁ。。。 で、これ、 「やすらぎ」 というタイトルには似つかわしくない別れの歌なんですが、一度別れて、何年かしてまたここに戻って来れば、その時やすらぎを お前は知るだろう♪…って、いや、中年の考えることは奥が深いですね。僕にはついていけません。

 で、14曲目は、しまざき由里「面影」 (作詞:佐藤純弥/作曲:菊池俊輔)。いや、歌も歌手もまったく記憶にありませんな。 『歌ネット』 にも今回紹介している15曲中、唯一これだけがデータにありませんでした。仕方がないのでちょっと調べてみたところ、おお、 『Gメン'75』 で使われた歌なんですね。子供の頃の僕の家庭はとっても躾が厳格で、幻覚が出るようなクスリや、低俗なテレビ番組の類はご法度だったので、まったく見た記憶がないんですよね、 『Gメン'75』 とか。こういう間違った教育のおかげで学校ではクラスメイトとまったく話が合わず、虐められて、シカトされて、すっかり性格のイジケた子供になってしまいました。ちくしょう、みんなに復讐してやるぅ!予習と復習もしたやるぅ!…と勉強に励んだおかげで、そこそこ成績のいい子供になることは出来たんですけどね。 で、この歌を聴いてみたところ、んんん、ん〜んんんんん〜、ん〜んんんんん♪…というものであることが判明したんですが、で、その後は、いつか来た道、あの街角に 一人求める、思い出いずこ♪…と続きます。いや、まったく記憶にないですね。で、メロディ的には、ネオ演歌とフォーク調の中間?…という感じで、悪くはないと思うんですが、いかんせんまったく記憶にありません。

 ということで、ラストです。山口百恵「夏ひらく青春」 (作詞:千家和也/作曲:都倉俊一)。 くちづけもかわさない清らかな恋を続けていた百恵ちゃんでありますが、やはり夏になると思わず開きたくなっちゃうんですね。仕方がないよね、夏なんだしー。 で、この歌、子供時代の僕にはまったく記憶になかったんですが、聴いてみたら非常に調子のいい歌でありました。 ひとつ結ぶ ひとつ開く 恋という名前の夏の花 ひとつ結ぶ ひとつ開く めくるめく光の中で〜♪ ちゃらららちゃらちゃちゃ、ちゃらちゃちゃちゃ〜、てれろん、てれろん♪ ちゃらららちゃらちゃちゃ、ちゃらちゃちゃちゃ〜、てれろん、てれろん♪…と、間奏の部分が何とも賑やかで品がなくて、時代を感じずにはいられないんですが、いきなりサビ風の派手なメロディを持って来て、後半はちょっぴり穏やかになるという、今までの歌謡曲にはあまりなかった曲作りが新鮮であります。 で、後半の歌詞はというと、めぐり逢って 好きになって 許しあって 後で泣いた私 きっと夏のせいね 女として 男として 大人として 認めあった2人 あつい出来事♪…って、百恵ちゃんは今年の夏も勢いでアヤマチを犯してしまったようですな。でもまあ、それも仕方がないですよね。それもこれもみんな、夏のせいだしー。 こうして少女は夏が来る度に、オトナになっていくのでありましょう。

 とまあ、そんなことで、75年版の前半はおしまい。最後にこの15曲の中から “さば的@我が心のベスト3♪” を選んでおきましょう。

(第3位) 想い出まくら / 小坂恭子

(第2位) 私鉄沿線 / 野口五郎

(第1位) 「いちご白書」をもう一度 / バンバン

 すごくオーソドックスな順位になってしまいましたが、ま、自分の気持ちに嘘を付いてまで、ウケを狙う必要もないしー。 ということで、次回は “75年版・後編” となりまーす。

( つづく♪ )


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