『 青春歌年鑑('72-2 ) 』

〜 「終着駅」から「赤色エレジー」まで 〜


1 女のみち / 宮史郎とぴんからトリオ
2 瀬戸の花嫁 / 小柳ルミ子
3 さよならをするために / ビリー・バンバン
4 旅の宿 / よしだたくろう
5 ひとりじゃないの / 天地真理
6 喝采 / ちあきなおみ
7 ちいさな恋 / 天地真理
8 太陽がくれた季節 / 青い三角定規
9 悪魔がにくい / 平田隆夫とセルスターズ
10 夜明けの停車場 / 石橋正次
11 だれかが風の中で / 上條恒彦
12 結婚しようよ / よしだたくろう
13 愛する人はひとり / 尾崎紀世彦
14 サルビアの花 / もとまろ
15 虹と雪のバラード / トワ・エ・モワ
16 終着駅 / 奥村チヨ
17 夜汽車 / 欧陽菲菲
18 純潔 / 南沙織
19 せんせい / 森昌子
20 雨のエアポート / 欧陽菲菲
21 男の子女の子 / 郷ひろみ
22 誰も知らない / 伊東ゆかり
23 どうにもとまらない / 山本リンダ
24 別れてよかった / 小川知子
25 耳をすましてごらん / 本田路津子
26 出発の歌 / 上條恒彦
27 望郷子守唄 / 高倉健
28 長崎慕情 / 渚ゆう子
29 哀愁のページ / 南沙織
30 赤色エレジー / あがた森魚


 えーと、まずは前回分の補足から片付けておきたいと思いますが、僕が詳しく知らずに適当にあしらっておいた歌曲に対して、某・読者より掲示板へのフォローの書き込みがありました。果たして“引用可”なのかどうかはサダカではありませんが、ま、掲示板に書き込まれていたものなので、ある程度、人目に晒されるのは覚悟の上か?…という判断のもと、ここに引用させて頂こうかと。もし不都合があるようでしたら“うんこ船・第五善○丸”の場合のようにメールにて連絡頂ければ直ちに削除致します。いや、メールのタイトルに“ホームページ停止のお知らせ”とか書いてあったので、何事かと思いましたけどね。それを言うなら“ホームページ停止のお願い”やろ。…と思ってしまいましたが、ま、面倒なことに巻き込まれても何なので、おとなしく削除しておきましたけどね。ということで、フォローの書き込みは以下の通りです。

 ひとりじゃないの / 天地真理
 は「ひっとりっじゃないって〜、すてきなこっとね〜
 というさびの部分だけ記憶がありますなー。

 夜明けの停車場 / 石橋正次
 は出だしの部分だけ覚えてます。石橋正次といえば歌手というよりも
 「俺は男だ!」で森田健作と共演してた俳優として記憶しております。

 だれかが風の中で / 上條恒彦
 これはもしかして「木枯らし門痔瘻」、って、どうして第一候補で
 このような変換をするのか理解に苦しむ訳ですが、
 ともかく、そのてーま曲ですかね。
 「どーこかでー、だーれかが、きぃっとまぁって、いて、くれるー」
 という出だしだったかと思います。


 なるほど、参考になりますね。で、前回の原稿を書いてしまってから、 『青春歌年鑑 '72』 の音源を手に入れることが出来たんですが、確かに天地真理「ひとりじゃないの」 というのはそういう歌でありました。もう少し正確を期すと、“ひっとりじゃないって〜らんららららら〜ら〜すってきなこっとね〜らんらららららら〜♪”…と、ギャル系コーラスが絡むことになるんですが、いや、この歌だったら僕も聴いたことがあります。というか、つい最近、NTTか何かのコマーシャルで流れていたような気がします。で、天地真理のもう1曲、 「ちいさな恋」 というのは実際に聴いてみても、あまりピンと来ませんでした。さほど売れなかったのではないか?…って、いや、これは僕の勝手な想像なんですけど。で、平田隆夫とセルスターズ「悪魔がにくい」 。“悪魔がにくい”というのは“ウンコが臭い”と言っているのと同じで、あまりにもひねりが無さ過ぎるのではないか?… というのが前回の論調だったんですが、実際に聴いてみると、僕のイメージとはちょっと違った感じの歌でしたな。いや、平田隆夫とセルスターズという名前から、勝手に内山田洋とクールファイブのような歌を想像していたんですが、ぜーんぜん違っておりました。ギャルとお兄さんの混声コーラスみたいな感じで、どちらかというとフォーク系というか何というか。あ、 「ハチのムサシは死んだのさ」 というのを歌っていた人たちなんですね。そちらのほうは何となくタイトルを聞いたことがあります。で、 「悪魔がにくい」 なんですが、“お前が好きさ、好きなんだ〜♪”…というのが歌い出しではなかったかと。で、最後の部分は、“お前の胸に忍び込んだ、悪魔が僕はにくい〜♪”…ですな。心変わりした相手を責めるというか、まだ未練たっぷりというか、いや、お前の胸に忍び込んだ悪魔を憎む前に、自分の行動に何か不備な点がなかったか?…というのを反省する必要があるような気もするんですけどね。例えば変態プレイを強要して、思いっきり嫌がられたとか。

 石橋正次「夜明けの停車場」 。これはアレです。俺は男だ!…ということを感じさせる、渋い男のムード歌謡。ま、そういった感じでしたね。ただ、森田健作的な青春っぽさは希薄でありました。続く上條恒彦「だれかが風の中で」は、かれい技師の情報提供どおりの歌でありまして、なるほど、 「木枯らし悶痔瘻」 のテーマにはいいかも知れません。で、尾崎紀世彦「愛する人はひとり」 。これはアレですね。要するに紀世彦クンは愛する女にフラれちゃったと。で、僕は今、傷心なんだ。だからいくら他の女が言い寄って来ても、僕はあの女でなけりゃ駄目なんだ…みたいな。何を言っておるのか、このモミアゲ野郎!…と、罵倒したい気持ちでいっぱいでありますが、ただ、最後のところで“愛せない〜♪”と来ておいて、オクターブ上がって“愛せない〜、ラララ〜♪”…と締めるあたり、そのスケールの大きなクドさは、ある種のマニアにとってはきっと、たまらん魅力なのではないかと。ま、スケールの大きな歌唱力ではありますな。で、僕が最も楽しみにしていたのが、もとまろ「サルビアの花」なんですが、これも僕が想像していたものとは少し違っておりました。原液女子大生3人組ということで、キャンディーズみたいに華やかで、キャピキャピした(←死語)世界を期待していたんですが、何と言うかこの、メロディ的には荒井由実「ひこうき雲」 みたいな。で、歌詞の内容はアレです。ストーカー男の勝手な言い分…みたいな。僕は君のベッドに真っ赤なサルビアの花を敷き詰めて、死ぬまで君を抱いていたい。でも君は違う人のところへ行ってしまった。どうして?僕の愛のほうが素敵なのにぃ。…って、いや、君がフラれた原因は、ワケのわからん“サルビアぷれい願望”にあるんぢゃないか?…という気がしてならんのですけどね。サルビアの花で真っ赤になったベッド。そんな愛って、素敵かぁ?…ということで、トワ・エ・モア「虹と雪のバラード」 。これはアレでした。札幌オリンピックのテーマ曲。なるほど。72年というのはそういうトシだったんですな。ということで、では後半に参りましょう。


 まずは奥村チヨ「終着駅」。えーと、作詞は千家和也、作曲は浜圭介ですか。チヨりんは後に浜圭クンと結婚することになるようですが、これはアレですね。ネオ・ムード歌謡とでも言いましょうか、歌詞はまるっきり演歌なんですが、流れるようなメロディには若干の目新しさというのが感じられなくもありません。“落ち葉の舞い散る停車場は、哀しい女の吹きだまり、だから今日も一人、明日も一人、涙を捨てにくる〜♪”…って、テーマとしてはアレです。恋に破れた女の一人旅。よくあるパターンですよね。恋に破れた女というのは大抵、演歌の世界では北のほうへと一人旅に出るということになっております。そして津軽海峡で凍えそうなカモメを見つめて泣たり、北の宿でセーターを編んだりするわけですが、この 「終着駅」 の場合は特定の主人公がいるわけではなくて、そのような女が1日1人の割合で、終着駅に降り立つと。そういうシステムになっているようです。今日はお日柄がいいから、どどーっと3人だね♪…とか、内部(うつべ)線が踏み切りで軽トラとぶつかって運転を見合わせているから、今日は誰もこなかったね。…とかそういうことはいっさい無くて、“今日も1人、明日も一人、過去から逃げてくる〜♪…と。ま、人生は様々ですなぁ。

 で、続いては欧陽菲菲「夜汽車」 。いや、イントロの部分が何だかえらくテクノだったので、誰の歌か?…と思っていたら、欧陽菲菲。ちょっと以外でしたね。いや、イントロの数小節以外はごく真っ当な歌謡曲だったんですけど。で、これ、橋本淳作詞、筒美京平作曲なんですね。京平クンにしてはやや演歌っぽい感じがするんですが、で、これはアレです。テーマとしては恋に破れた女の一人旅。よくあるパターンですよね。“希望と言う名の夜汽車に揺られ、女心はどこまでゆくの〜♪” …というのが歌い出しなんですが、ま、恐らく終着駅まで涙を捨てに行くのではないかと。“希望という名の…”とありますが、これはあくまでも逆説的な意味に捉えたほうがいいと思います。で、台湾出身ゆえ、今ひとつ日本語に心もとないところがある菲菲ちゃんですが、“女心”を“おんなごころ”ではなく、“おんなこころ”と歌っているところはまあ、ご愛嬌。全般的に見て、濁音系が怪しいんですよね。で、メロディ的はアレです。歌謡曲系の演歌。ま、そんな感じですな。AABA形式の分かりやすい作りとなっております。そんだけ。

 続いては南沙織「純潔」 という歌ですな。作詞:有馬三恵子、作曲:筒美京平。タイトルからして、またまた清純派アイドルが清純派ぶってぇ。…と、髪の長い女があまりタイプではない僕はちょっぴり反感を覚えてしまいましたが、思っていたのとぜんぜん違ったタイプの歌でありました。なんというかこの、パンチのある歌ですな。パンチもあるんですが、パンツもある。…といった微妙なセンをテーマにしておりまして、肉体の悦びに目覚めてしまったというか、純潔というよりも半ケツというか、パンツを半分脱ぎかかっているというか、とにかくまあ、イントロの部分がとってもロカビリーっぽかったりするところに驚きを禁じ得ない僕でありますが、いや、とっても調子のいいメロディなんですよね。これぞ京平って感じぃ? 林家こぶ平ではこうはいきません。間寛平でもこうはいきません。野末珍平でも駄目だと思います。で、この歌はアレですね。“あっ…らし(嵐)の日も、カっ…レ(彼)とならば、おっ…うちが飛びそうでも、たっ…のしいのよ、カっ…ラダ(体)なんか、きっ…れそうな嵐でも♪”…と、言葉を切る場所が独特で、なんとも斬新な感じがしっ…ちゃいますよね。で、要するに沙織ちゃんが言いたいのは、“わっ…たし(私)、愛してる、カっ…レも、感じてる〜、恋は大事ね〜♪”…ということでありまして、いや、気持ちよさそうで何より。で、その後に聴かれる、ぱ〜ぱ〜ぱ〜ぱ〜ぱぱっぱ〜♪…というブラス・アンサンブルが実に効果的であります。で、歌の最後の部分は、“あっ…あああああ、あっ…あああああ、あんあんあんああんああんあんあ〜ん♪”…って、いや、南沙織もすっかりイメージが変わっちゃいましたなぁ。

 で、続いてがらっとムードが変わって、森昌子「せんせい」 。作詞:阿久悠、作曲:遠藤実森。森昌子というのはアレですな。“花の中三トリオ”の中でも群を抜いて抜群にオバサンっぽいな。…というのが僕の子供時代の印象だったんですが、こうして改めてデビュー当時の歌声を聴いてみると、紛れもなく15歳のギャルの声ですよね。けっこうカワイイんですよね、これが。で、この 「せんせい」 という歌は、曲調的には小柳ルミ子の 「瀬戸の花嫁」 的と言うか、あまりアイドルちっくではなくて、どちらかというとオバサン的というか、いや、歌詞としてはまったく15歳のギャルっぽい内容なんですけどね。いずれにせよ、当時の中学生というのは純情そうでよかったよなぁ。…と、おじさんとしては懐かしく思ってしまうのでありました。しかしこの歌、72年のものだったんですな。ということは、当時、僕は4ちゃい。いや、小学生の頃に流行った歌だとばかり思っておりました。で、続いては今回2度目の登場となります欧陽菲菲の 「雨のエアポート」橋本淳作詞、筒美京平作曲…でしょうか? 「夜汽車」飛行機版というか、「雨の御堂筋」エアポート版というか、とにかくまあ、この人の歌にはシリーズ化の傾向が見られますよね。で、この 「雨のエアポート」 は、メロディ的にはベンチャーズ作品である「雨の御堂筋」を踏襲した感じでありまして、菲菲ちゃんの日本語の怪しさが冒頭部分から炸裂しております。いきなり、“サメに濡れているわ、エアポート♪”…ですもんね。何故ここにいきなり“”が出てくるのか理解に苦しんでしまいましたが、もしかしたら菲菲ちゃんは、“雨に濡れているわ”、もしくは、“小雨に濡れているわ♪”…と言いたかったのかも知れませんが、何度聴いても“サメに濡れているわ、エアポート♪”…と聴こえてしまいます。ま、それもご愛嬌なんですけどね。で、菲菲ちゃんは台湾出身ゆえ、日本語だけでなくて英語の発音のほうもけっこう怪しかったりします。前作、「夜汽車」では、”さよなら、グッバイ、メランコリー♪”…という英語の歌詞を無難に歌いこなしておりましたが、今回の、“アラブ湯と言えないで〜♪”…という部分は理解するのにちょっぴり時間が掛かってしまいました。“アイ・ラブ・ユーと言えないで〜♪”…という意味だったんですな! いや、どうしてここにいきなり“アラブ”が出てくるのか不思議に思っていたんですよね。でもまあ、エアポートだからアラブが出てきても不思議じゃないよね。愛していたアラブ人の不法就労がバレて、強制送還されちゃうのを嘆いた歌?…と、勝手にイメージを膨らませていたんですが、ぜんぜん違っていたことを、ここにお詫びして訂正させていただきます。

 ということで、続いては郷ひろみ「男の子女の子」岩谷時子作詞、筒美京平作曲。京平クン、頑張ってますなぁ。で、森昌子の 「せんせい」 を聴いてその声の若さに驚いた僕でありますが、いや、これはそれ以上でありますな。まるっきり“声変わりした直後の中学1年生の声”ですもんね。こんなんで社会人としてちゃんとやっていけるのか?…と、関係のないところで心配になってしまいますが、“新人らしい初々しさ”…というのを遥かに超越したラブリー・ヴォイスですぜ、こりゃ。いや、どちらかというと気持ち悪いんですけどね。“ヘイヘイヘイ、ヘイヘイヘイ♪”…というところはまだ許せるとして、“髪をなびかせて、ゴー、ゴー、ゴー、ゴー♪”…という部分では呆れるのを通り越して、思わず爆笑しちゃいました。いや、ただ者ではありませんね、ヒロミ・ゴー。ということで、気分を変えて次にまいりましょう。以東ゆかり「誰も知らない」岩谷時子作詞、筒美京平作曲。この人の歌というのは 「小指の思い出」 しか聴いたことがなかったんですが、例の、“あなたが詰めた、小指が痛いっ♪”…というヤツですよね。ヤクザ稼業のオキテの厳しさを歌ったものとして大ヒットしたわけですが、これ以外にもこんな歌を歌っていたんですな。ちっとも知りませんでした。で、これはアレです。フォークと歌謡曲の微妙な境界点…と言うか、メロディの流れ自体は欧陽菲菲的だったりもするんですが、微妙に新しかったりもするというか、何というか。“このままで帰ろうか、振り向こうか♪”…というAABA形式の“Aの部”は菲菲なんですが、“あ〜、誰も知らない出来事だから〜、別れがとても辛くって、辛くって〜♪”…というサビのメロディは割と新しかったりするという。ま、そういった歌なのでありました。

 次。山本リンダの 「どうにもとまらない」 。作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一。これは凄いです。改めて聴くともう、物すごぉーく凄いです。近年、ギャグの一環として再評価の機運が著しい山本リンダでありますが、純粋に歌を聴いてみてもその先進性の高さには驚かされるものがあります。賑々しいイントロはブラジルから腕利きのミュージシャン連中を集めてきたんぢゃないか?…と思ってしまうほどの純粋ラテンだし、“うっわさを信じちゃいけないよ、私の心は初心(うぶ)なのさ♪”…という歌声のバックに聴かれるピアノのコンピングとホーン・アンサンブルからはジャズの魂が色濃く感じられます。いや、これほどまでに無国籍なサウンドを展開するとは、リンダ、ただ者ではありませんな。無国籍と言えば山本リンダの日本語の発音は欧陽菲菲以上に怪しげだったりするし、これは敢えて日本語を分かりにくく歌っているサザンの桑田にも相通じるものがあります。いやあ、伊達にヘソを出して歌っているわけではありませんなぁ。…ということで、次。小川知子「別れてよかった」 。これまた、 「どうにもとまらない」 とは違った意味で新しいサウンドですよね。パワフルで、痔が切れるんぢゃないか?…と聴いてるほうが心配になっちゃうような山本リンダの歌いっぷりと違って、知子ちゃんのほうはまったく力を入れない囁くような歌いっぷり。何かこう、小洒落た感じがしますな。“シャララ〜、シャラララ〜、トゥトゥル〜♪”…とか言って、実に何というかこう、洒脱です。で、“別れてよかった”…というのは無論、逆説的と言うか、強がっているというか。あなたみたいな人と別れたおかげで、子犬を連れて散歩も出来るし、夜遅くまで本も読める。お洒落をして映画を見たり、買い物も好きな街に行けるわ〜♪…と、せいぜい強がって気丈にふるまっておりますが、でも本当は騎乗位でバンバン愛し合いたいのぉ。…って、いや、誰もそんなことは言ってませんね。“私は泣いてない、泣いてなどいない、降り始めた雨が頬を濡らすだけよ〜、シャララ〜、シャラララ〜、トゥトゥル〜♪”…と、知子ちゃんは主張しているわけであります。鼻毛ですなぁ。あ、違いました。健気ですなぁ。

 で、次。本田路津子「耳をすましてごらん」 。誰なんすかね?ろつ子。あ、ろつ子ぢゃなくて、るつ子ですか。いずれにせよ、僕は知りません。が、僕が知らないからといって、イコール、あまり有名な人ぢゃないんだぁ。…と断言するのは間違いでありまして、もの凄く世俗には疎いですからね、僕って。通俗的なフーゾクとは無縁なところで生活している高邁な僕でありますが、この 「耳をすましてごらん」 という歌はあまり歌謡曲的でないというか、えーと、ある情報筋からの情報によると、“70年のデビュー時には、その透明感あるヴォーカルから“第二の森山良子”と絶賛を受けた本田路津子。「風がはこぶもの」「ひとりの手」などのヒットを放ち、NHK朝の連続テレビ小説 『藍より青く』 の主題歌 「耳をすましてごらん」 の大ヒットで広く知られるようになった。”…と。 なるほど、確かに透明感のある歌声ではあるんですけどね。ということで、次。上條恒彦「出発(たびだち)の歌」「朝立ちの歌」 ではありません。そんなものを歌ってみたところで、何も生まれるものはありませんもんね。で、 「出発(たびだち)の歌」 。作詞:及川恒平、作曲:小室等…って、そうそう。小室等の曲なんですよね。で、“世界歌謡祭国内音楽祭・合歓ポピュラー・フェステバル受賞作品”…なんだそうで。凄いですねー。これが一体どのようなフェステバルなのか、世俗に疎い僕には皆目見当がつかないんですが、“フェスティバル”でなくて“フェステバル”となっているところに高い国際性を感じ取ることが出来ますよね。ま、“安曇野ジャズ・ヘェスティバル”よりはマシですけど。 で、 「出発(たびだち)の歌」 と言われても、どういう歌なのかあまりピンとこない人のために歌詞を紹介しておくと、“さあ今、銀河の向こうへ、飛んでゆけ〜♪”…というのがサビの部分でありますな。出だしの部分は今ひとつ地味っぽいんですが、愛と勇気と希望に満ち溢れたサビのメロディは大いに盛り上がって、よろしいのではないかと。ロケット打ち上げの際のBGMにするといいかも知れませんね。ま、日本のロケットは“銀河の向こう”どころか、打ち上げから5分くらいで爆破されちゃうのが常なんですけど。

 はい、次。高倉健「望郷子守唄」「包茎子守唄」 ではありません。そんなものを子守唄にしてみたところで、赤ん坊が泣き止むとは思えませんもんね。ま、そういう状態でもヤルことだけはちゃんとやって、ちゃんと赤ちゃんまで出来たというのなら、まずはめでたい話ではありませんか。…という気はするんですけどね。で、これはアレです。“おろろん、おろろん、おろろんばい♪”…って、これは何という歌でしたっけ? 「島原地方の子守唄」 ?もしかしたら違ったかも知れませんが、とにかくまあ、その手の子守唄をモチーフにした任侠モノでありますな。健さんの声が渋いです。で、続いては渚ゆう子「長崎慕情」 だじょー。欧陽菲菲以上にシリーズ化を感じさせる歌い手でありますが、“京都”を振り出しに“さいはて”まで行っちゃったな。…と思ったら、少し戻って今度は“長崎”でありますか。いや、“さいはて”というのがどこを想定したものだったのか、よくは知らんのですけど。で、 「長崎慕情」 はアレです。林春生作詞、ザ・ベンチャーズ作曲です。ベンチャーズの曲…と言われても、僕は別段、驚きもしなければ、過度の期待を持つこともありません。言われなければ全然気が付かないほど、ごく普通の歌謡曲ちっくな曲ですもんね。もっとデケデケデケデケせんかいっ!…と叱咤激励したくなっちゃう程なんですが、この 「長崎慕情」 もごく普通の哀愁味を帯びた演歌でありました。そんだけ。

 次です。南沙織の 「哀愁のページ」有馬三恵子作詞、筒美京平作曲。せっかく 「純潔」 で肉体のヨロコビに目覚めたと言うのに、いきなりしゃらくさい英語の台詞が出てきたりして、何だ?…と思ってしまいましたね。スカしてんぢゃねえ!…と思ってしまった僕は歌のほうは聴かずにいたんですが、試しに聴いてみたら、いや、悪くない歌でしたな。ミディアム・スローのしっとり系のナンバーというか、無難な出来栄えというか、ま、そんな感じでした。ということで、残すところあと1曲です。あがた森魚「赤色エレジー」 。何でもいいけどこの人の名前、何と読むんですかね?しんぎょもりぎょもりさかなもりうお?…って、最後のヤツがいちばん近くて、“あがた・もりお”。いや、多分。で、この 「赤色エレジー」 というのはアレです。“幸子と一郎の物語〜♪”…というヤツです。作詞・作曲:あがた森魚。“林静一の叙情漫画 「赤色エレジー」を元に、登場人物である幸子一郎のはかなくも切ない同棲生活を、哀愁こもったメロディにのせて歌っている”…そうであります。ノスタルジックと言うか、昭和ロマネスクと言うか、古臭いと言うか、浪曲風と言うか。“幸子の幸は、どこにある〜♪”…というフレーズが泣かせますね。でもって最後のフレーズは、“お涙頂戴、ありがとう〜♪”…って、いや、典型的な一発屋でありますな、こりゃ。ということで、72年版はおしまい。

( つづく♪ )


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