『 真夏の夜のジャズ (その2)』



 引き続き『真夏の夜のジャズ』です。いいですね。『真夏の夜のヤスデ』というのは嫌ですけどね。安手の建売住宅なんかにはよく出るようですね。ちなみにヤスデムカデはよく似ておりますが、分類学上はまったく別の生き物なんだそうです。ヤスデが節足動物・倍脚綱で、ムカデが節足動物・唇脚綱なんだそうです。噛むのがムカデで、噛まないのがヤスデだそうです。ヤスデは噛みはしませんが、体内から青酸などを放出するそうです。ロクなもんじゃありませんな。だいたい、必要以上に脚が多すぎるのがいけません。小学生の頃、“メカモ”のムカデを組み立てるのに、どれだけ苦労したことか!だから僕はヤスデにしようって言ったのにぃ。…って、そんなシリーズはなかったし、もしあったとしても似たようなものだと思うしぃ。で、ムカデヤスデに関する考察は“ぢゃづ・ぢゃいあんと”の前半で使えるかな?…という気がしないでもないので温存しておいて、ではさっそく本題に入りましょう。


「 ジョージ・シアリング・クインテット 」

 えー、DVDにはチャプターという頭出し用の区切りのようなものがあるんですが、たとえば女優2名がパックされた“すけべDVD”の場合、「ひなの@漆ぷれい♪」とか「彰子@地味ぷれい in 大阪」とか、出演者別・場面別で区切られているわけでありますな。あ、地味プレイは地味で盛り上がらないから、パス。…とか、自分の好みにあわせた鑑賞が可能になるわけですが、『真夏の夜のジャズ』の場合、基本的に演奏曲ごとにチャプターが付けられております。演奏と直接関係のないシーンは別チャプターになっておりますのでスキップすることも可能なんですが、一見どうでもよさそうなヨットレースの場面など、すべてを含めた上での“夏夜(なつよる)”ですので、どのシーンも欠かさずに見ることをお薦め致します。“すけべDVD”でもいきなりクライマックスまでいっちゃうより、“脱衣シーン”からじっくり見たほうが確実にコーフンしますもんね。で、このDVDでは“チャプター13:「ロンド」”となっているのがジョージ・シアリング・クインテットの演奏シーンです。いきなり演奏しているプレイヤーを映すのではなく、会場に足を運ぶ観客達の姿を捉えているところがさすがですな。この映画は“ジャズ映画”ではなく、あくまでも“ジャズ・フェス記録映画”ですからね。で、バックに流れているのは陽気なラテン・ジャズ。「この音楽でわかるように、私は今、ジャズ・フェスティバルの会場にいます。」といったギャル系アナウンサーの声が入ります。例のごとく記憶追想型執筆なので細かいニュアンスは違っているかも知れませんが、大会関係者らしい“美しい女性”(←声だけなので真偽のほどは分からず)に対するインタビューがあったりします。雨が降らなくてよかったね。…とか、私も持っていたコートを脱いだわ。…といった話をしております。この声から僕たちが判断出来るのは、コートだけじゃなくてパンツも脱げって。…とか、そのシーンもきちんと映せって。…とか、でも声の様子から判断すると“美しい女性”というのはあくまでもアメリカン・ジョークで、実際には見たくもないようなオバハンなんとちゃうか?…といったことではなく、会場はコートの必要性が懸念されるほど寒いらしい…ということですよね。このあたり、“真夏の夜のジャズ”のイメージとちょっと違うかな?…という気もするんですが、夜になると意外と冷え込むのかも知れませんね。フェスティバルは“夜の部”に入ったようで、あたりはすっかり暗くなっております。

 さて、ここでジョージ・シアリング登場。いや、ラテンでノリノリの演奏でありますな。特にコンガ(←だと思う)を叩いている黒人のオニーサンが凄いです。僕には楽器演奏の素養がまったくなくて、ピアノもサックスもトランペットもギターもベースもドラムスもヴァイブもまったく駄目で、あ、でもヴァイブならON・OFFと強弱のスイッチ操作だから何とかなるぅ?…という気がしないでもないんですが、それは楽器じゃないほうのヴァイブの話だし、だからもし僕がジャズ・コンボに演奏者として誘われるようなことがあれば、“コンガ担当”にして貰おう。…と思っていたんですが、これを見てすっかり自信を喪失しました。この叩きっぷりはもはや神業の域に達しております。マジな話、こりゃ、手が6本くらいないと無理じゃないっすかね?僕はこの素晴らしいコンガ奏者に敬意を込めて“阿修羅さだお”というニックネームを付けた次第でありますが、それにしてもジョージ・シアリングって、こんな熱いキャラでしたっけ?もっとこう、苦虫とかムカデとかヤスデを噛み潰したような表情で、陰々としたクール・ジャズをやる人だとばかり思っておりました。いやあ、意外な発見が出来てよかったですなぁ。


「 ダイナ・ワシントン 」

 で、続いてはダイナ・ワシントンです。日本ではもっぱら、クリフォード・ブラウンとの共演盤で知られるギャル系ボーカリストでありますな。ま、“ギャル”と呼ぶにはちょっと語弊があるずら。…と、五平餅屋の主人(木曽福島町出身・57歳)が言っておりましたが、ま、そこは拡大解釈ということで、…って、あ、それはレニー・トリスターノやん。…って、いや、先ほどの“苦虫とかムカデとかヤスデを噛み潰したような表情で、陰々としたクール・ジャズをやる人”なんですが、それはシアリングじゃなくて、トリスターノでありますな。名前が似ているので(←似てるか?)、ごっちゃになっておりました。が、ジョージ・シアリングにしても“洒脱なジャズをやる人で、好きな暖房器具はコタツ”といった先入観があったので、ラテンでノリノリの演奏を繰り広げる彼は、新しい発見でありました。意外とハロゲンヒーターとかも好きだったんですね。マイナス・イオンも出るしぃ。…みたいな。

 で、ダイナです。いきなり、股間のあたりに付けられたと思われるブローチのようなものを大写しにしたりして、なかなか斬新なアングルでありますな。で、カメラが引いてダイナ嬢の全身像があらわになるわけでありますが、印象としては“貫禄のあるオバハンで、好きな駄菓子は兵六餅”といった感じですね。意外とマニアなものが好きなんですな。日本人なら“ボンタン飴”やろ!…という気がしないでもないんですが、ダイナは日本人じゃないし、“ボンタン飴”よりも“兵六餅”のほうがよりいっそう日本的なような気もするしぃ。で、演じる出し物は「オール・オブ・ミー」でありますな。ダイナのようなオバハンに、「わたしのすべてを、あ・げ・る♪」と言われても、「いや、いいですぅ。」と逃げ腰になっちゃうと思いますが、それを許さないだけの迫力がありますな。力ずくの愛、そして、好きな海草はもずく。そういったものを感じずにはいられませんが、観客たちは暗闇のなかで踊りまくっております。この調子では、もっと暗いところではどのような事態になっているのか分かったものではありませんが、「ああん、そんなところに手を入れちゃ駄目ぇ♪」「おや、これは何かなぁ?」「ああん、わたしの、も・ず・く♪」みたいな。何をやっておる!怪しからんっ!…と思わずにはいられませんが、この演奏における最大のポイントは豪華なサイドマンでありますな。ドラムスはあのマックス・ローチ、ヴァイブでノリノリのプレイを繰り広げるのは、昆布青年も大好きなテリー・ギブスではありませんかぁ。で、ピアノを弾いているのはウイントン・ケリーらしいという話もあるんですが、残念ながら姿が映っておりませんので真偽のほどはサダカではありません。で、ここからが注目です。題して、“間奏部でヴァイブを連弾するギブスとダイナ”。これはイイです。ひとりぼっちのヴァイブは何だかサビシイけど、2人だとこんなに盛り上がるのぉ♪…ということを改めて感じさせる、この映画の必見シーンでございます。ということで、ローチを含めた“魅惑の3Pシーン♪”を掲載しておきましょう。

 弾き終わって、ギブスの顔を「どうよ!?」といった感じで見据えるダイナの自信に溢れた表情がいいですな。で、それが終わって今度はトロンボーンのソロです。僕はよく知らんのですが、アービー・グリーンという人のようです。いかにもボントロらしいほのぼのとしたムードがいいです。ということで、ダイナはおしまい。アニタ・オデイの艶やかな姿に、「やっぱ、ぎゃる系ジャズ・ ボーカルは白人だよね。華があるしぃ。」とか思っていた人も、ダイナの圧倒的なパフォーマンスに、「でもやっぱ、黒人のオバハンもいいよね。」…と再認識するに違いありません。


「 ジェリー・マリガン・カルテット 」

 黒人のおばさんも頑張っておりますが、白人のオニーサンだって負けてはおりません。ジェリー・マリガン。いいですねぇ。男前ですね。伊達にチェット・ベイカーアート・ペッパーと並んで、“白人ジャズマン@男前トリオ”の一翼を担ってたわけじゃねーな。…といった感じですね。ちなみに僕はさほど男前でもないし、板前でもないんですが、出前でウドンを取ったりすることは出来ます。生きていく上では、それで充分じゃないかという気もするんですが、マリガンと言えばピアノレス・カルテットですね。バルブ・トロンボーンのボブ・ブルックマイヤーを加えたカルテットが有名なんですが、ボブちゃんはジミー・ジュフリーに取られてこの映画の最初のところに登場しておりましたので、変わりにアート・ファーマーが入っております。ベースはというと、あのビル・クロウですな。村上春樹訳の『さよならバードランド』で一躍有名になった感がありますが、いやあ、いい本でしたなぁ。37ページくらいで挫折しちゃいましたが、『できる男のパンツの色』が3ページもたなかったことを思えば、上々の出来だったと言えるでありましょう。で、ここでの演目は「アズ・キャッチ・キャン」ですね。アンサンブル・パートとソロ・パートの対比が絶妙で、ファーマー、マリガンともソロの出来栄えは極めて充実しております。演奏の出来としては、この映画の中でも屈指の名演と呼べるのではないですかね?で、マリガンのハンサムぶりを反映してか、映される観客はギャル系、それもかなりの美形が多数を占めております。明らかに“ギャル系に人気のマリガン”というメッセージ発信を意識した絵作りとなっているんですが、あるいは関係者からヨーカンの2本でも貰ったのかも知れませんね。僕も“ギャル系に絶大なる人気を誇るさば”というイメージを高めるためなら、ヨーカンのほかに“ういろう”(←ゆず味×1本)も付けていいかな?…と思っているほどなんですが、いや、男前ではありませんが、わりと気前はいいほうですからね、僕って。ということで、マリガンはおしまい。あ、最後のところでメンバー紹介があるんですが、前出の3人の他、ドラマーはデイブ・ベイリーでありました。


「 ビッグ・メイベル・スミス 」

 君はビッグ・メイベル・スミスを知ってるかな?僕は知りません。知らない人だから期待度は0%だったんですが、実際に目にした時のインパクトは175%を優に超えておりました。黒人のオバハンなんですが、デカいなんてもんじゃありませんな。まさに“ビッグ”の名に恥じないというか、“ビッグ”などというナマやさしい単語ではとてもじゃないけど表現出来ないというか、とにかくまあ、デカいです。“昼の部”の、たぶんモンクが登場する前だったと思いますが、観客席にもの凄くデカ太いオバサンが座っているのが映し出されておりましたが、客ではなくてミュージシャンだったんですな。あるいは、あまりにも馬鹿デカくて目立つので目を付けられて、飛び入り参加を余儀なくされた近所のおばさんだったりするのかも知れませんが、商店街でたくさん買い物をしたら、サービスでジャズ・フェスの入場券をくれたんですよね。おそらくタカナシ乳業あたりが提供して商店街に配ったものだと思われますが、こんなもの貰ってもねぇ。…と、おばさんは最初、あまり乗り気ではなかったんですよね。ジャズなんかぜんぜん興味ないしぃ。…と思っていたんですが、せっかくだからというので会場に足を運んでみたところ、いきなりステージに引っ張り出されて「アイ・エイント・マッド・アット・ユー」を歌わされ、それがDVDになって極東の島国にまで売りに出されるんだから、世の中、何が起こるかわかったもんじゃありませんなぁ。…というストーリーを思い描くには、このオバサンはあまりにも歌がうま過ぎます。おそらく、R&B系のプロ歌手なんでしょうな。で、その迫力たるや、想像を絶するものがあります。図体があまりにも馬鹿デカくて、声の質など、まるっきりおっさんです。が、ベビー・フェイスで、意外と可愛い顔をしてるんですよね。頭にはロリ系メイドの必須アイテムである白いカチューシャ(?)だって付けておりますし、“超巨躯ロリフェイスおっさん声メイドふぇち♪”の人にとっては、もうたまらんっ♪…といった感じのお宝映像であると言えましょう。



「 チャック・ベリー 」

 この人が出て来て、会場の雰囲気がガラッと変わりました。チャック・ベリーです。聞いたことがあるような、無いような名前でありまして、期待度はまあ、35%?…といった感じだったんですが、いや、演目の「スウィート・リトル・シクスティーン」には大いにソソられるものがあったんですけどね。甘いリトルな16歳♪いいではないか!…と、おじさんの期待はいやが上にも高まってしまうわけです。顔は意外とスウィートだったけど、まるっきり“リトル”とは正反対だった46歳(←推定)を目の当たりにした直後だけに、その感は尚更です。が、いざ演奏が始まってみて、愕然としましたね。ロックぢゃん!いや、当時のヤングな若者達にとっては最先端をゆくナウなサウンドだったんでしょうが、大人のジャズを堪能した耳には何とも稚拙な音楽に聞こえてしまいます。いや、チャック・ベリー自身に問題があるわけではないんですが、場違いな感は否めません。が、観客は大ウケして踊りまくっておりますので、これはこれでよしとしておきましょう。ちなみにチャック・ベリーというのはマイルス・デイビスを軟派にしたようなルックスの持ち主で、なかなかの男前でありますな、真のギャル系にはウケがよさそうです。で、ジャズ・ファンにとっての見所と言えば、バックでニコニコしながらタイコを叩いているハゲのおっさんでありましょう。おおっ!これはジョー・ジョーンズじゃないっすか。フィリー・ジョーのほうのジョー・ジョーンズではなく、パパ・ジョーのほうのジョー・ジョーンズです。これはいいです。「気分は上々だじょー。」といった感じで、気楽に叩いているところがいいです。あと、ソプラノ・サックスみたいな楽器を吹きまくっておじさんもいいです。ということで、チャック・ベリーはおしまい。


「 チコ・ハミルトン・クインテット 」

 何やら浮ついた雰囲気から一転して、知的でアブストラクトな室内楽的サウンドを標榜するチコ・ハミルトン・クインテットの登場です。観客の表情が思わず引き締まる中、流れてまいりますのはご存知「ブルー・三途」、いや、「ブルー・サンズ」でありますな。エキゾチックな味と香りのオリエンタル・マースカレーな名曲でありますが、フルートを吹くドルフィーが、凄いっ! いや、演奏自体はアンサンブルを重視したグループ・エクスプレションゆえ、それほどブッ飛んだものであはありませんが、顔が若いっ!渋いっ!カッコいいっ!しかも、動いてるっ!…というだけで、ジャズ・ファンはいたく感激してしまいます。いやあ、いいですなぁ。


 で、もうひとつの注目ポイントはチコ・ハミルトンの叩きっぷりなんですが、いや、一聴するとクールな室内楽的サウンドなので、もっと淡々とタイコを叩いているのかと思ったら、意外な熱演ぶりでありました。額から汗を流したりして、その真摯な眼差しが強く心を揺さぶりますなぁ。で、この映画の凄いところは、演奏の途中で音がスーッと消えちゃうところでありまして、無音の空間の中で繰り広げられるハミルトンの姿は、実際の“音”以上に雄弁でございます。ジャズ・フェスの記録映画で“音”を無くすというのは相当な勇気が必要だったと思いますが、それが実に見事な効果を上げておりますな。いや、実際には演奏の途中でマイクの電池が切れたか何かで、音が入らなかっただけのことなのかも知れませんけどね。


「 ルイ・アームストロング・オール・スターズ 」

 さ、ここで大御所の登場です。サッチモです。まず最初にチャプターで“サッチモ”と名付けられた、サッチモへのインタビューが始まります。「外国で言葉に困ったことは?」とか、そういった当たり障りのない会話が交わされます。しかし何ですな。サッチモという人は根っからのエンターテイナーでありますな。根っからのネカマ…というのはWeb上に蔓延しておりますが、ああん、サッチモおぢさんってば、とってもカワイイのぉ♪…と、めったやたらに “(ひなのまーく)” を濫発したりして、見苦しいことこの上ありません。身に覚えがある人は大いに反省して今後は自重して頂きたいところでありますが、サッチモおぢさんの“しゃべり”はそれなりにウケております。ま、外国で体重計に乗ったら単位が違ってて、がははははは。…というお話は、サッチモ本人が「ウケたかな?」と言ってるわりにはさほどウケてはおりませんが、おそらく彼にしてみれば、とっておきのネタだったんでしょうな。それが大してウケなかったとなると、普通の人なら「もう、いいっ!」と気分を害して、拗ねて帰っちゃうところでありますが、そこはさすがルイ・アームストロング。さして落ち込んだ様子もなく飄々とトークを続けると、やがて最初のナンバー、「レイジー・リバー」が始まるのでありました。で、サッチモというのはアレです。ちょっと前のホンダのCMか何かで流れていた、「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」。あの歌を独特のだみ声で歌っていたおじさんです。ちょっと前と言っても約17年前だったりするわけですが、おじさんにとってはつい昨日のように思われるわけでありまして、で、職種としてはトランペッター兼ヴォーカリストといったところでありますな。ということで「レイジー・リバー」です。タイトルどおりスロー・テンポのレイジーなナンバーでありまして、サッチモはまずヴォーカルを披露しております。で、途中からミディアム・テンポになって、サッチモはスキャットを披露しております。で、最後はトランペット・ソロですな。クラリネットを吹く人のソロもあったような気がします。ということで、「レイジー・リバー」はおしまい。続いて、何だかムチャクチャ気合の入った人のドラム・ソロがあって、演奏は「タイガー・ラグ」へと突入します。ああ、筋肉痛の薬ぃ?…って、それは「タイガーバーム」ですね。臭いですよね。こんな臭いもん、食えるか!…と思ってしまいますよね。ま、食い物ではないので別に食えなくても問題ないと思いますが、何だかとっても派手な演奏だったように思われます。ということで、「タイガー・ラグ」はおしまい。で、続いてはサッチモジャック・ティーガーデンとの共演です。このティーガーデンという、ハーブ茶でも栽培してそうな人の本職はトロンボーン奏者のようですが、ここではサッチモと2人で親子掛け合い漫才風のボーカルを披露しております。演目は「ロッキン・チェア」。このシーンだけ歌詞の日本語訳が字幕で出てくるので歌の意味がよくわかるんですが、揺り椅子に揺られてお迎えが来る日を静かに待っているパピィ(ティーガーデン)と、息子のサッチモとのペーソス溢れるやりとりが楽しくて、やがて哀しきピロシキかな。…といった感じで、とてもいいですね。とまあ、そんなことで、サッチモの最後は「聖者の行進」です。「ホエン・ザ・セインツ・ゴー・マーチン・イン」です。とっても賑やかな演奏で、ま、無難なセンではないっすかね?…ということで、サッチモはおしまい。


「 マヘリア・ジャクソン 」

 で、フェスティバルの大トリはマヘリア・ジャクソンっすか。“世界最高のゴスペル・シンガー”とのことでありますが、個人的にはあまり馴染みがないので、期待度は27%程度ですな。個人的にはドルフィーの演奏が終わった時点で、この映画のヤマは超えたな。…という感じなんですが、どうして最後がこの人なんすかね?大トリはやっぱり、鳳啓介やろ?演目は「真夏の夜のポテチン」とか、…と思わずには入られませんが、ま、最後に出てきちゃったものはしょうがないしぃ。で、まず最初に歌うのは「神の国を歩もう」、片仮名では「シャウト・オール・オーバー」という歌でございます。出てきたマヘちゃんは、ま、普通の黒人のオバハンですな。わりと図体はデカいほうでありますが、ビッグ・メイベル・スミスを見てしまった今となっては、少々のデカさでは動じません。で、歌のほうも無論ヘタではありませんが、さほどのインパクトは感じませんでした。ということで、次です。「雨が降ったよ」、片仮名では「ディドゥント・イット・レイン」という曲です。今度はかなりノリがいいですね。マヘちゃんも、ぱちん、ぱちんと乾いた音で手を叩いたりしながら頑張っております。観客もノリノリですね。ジャズ・フェスもこのあたりになってくると観客全員が酔っ払ってヘベレケになっているに違いなく、ところでヘベレケって、どうしてヘベレケっていうんですかね?語感からして、意外とドイツ語あたりから来ているのではないか?…と睨んでいるんですが、そろそろ書くこともなくなってきましたので、ちょっと調べてみました。違いました。ドイツ語ではなく、ギリシア語でした。えーと、ギリシアには“ヘーベー”という女神さまがいたと。で、この神様は宴会時におけるコンパニオン・ガールみたいな役割を担っている神様なんだそうですが、その“ヘーベー”がお酌をすることを、ギリシア語で“ヘーベ・エリュエーケ”と言ったと。で、その“ヘーベ・エリュエーケ”が短くなって“ヘベレケ”になったと。おお、何という説得力!…とまあ、そういうことで、「雨が降ったよ」です。ンなこといちいち言われなくても、毎日降ってるちゅうに。…と、梅雨空が続く今の時期には文句のひとつも言いたくなってしまいますが、ま、ヘベレケの観客には大ウケで、みんなで踊りまくったりしておりますので、盛り上がっていて何よりだと思います。歌が終わると会場は割れんばかりの大拍手。マヘちゃんも感激の面持ちで、「何だかスターになった気分よ。」などと言って観客を笑わせております。気分はすっかり“スターにしきの”って感じぃ?…って、例えがあまりにも大したことのないスターでしたね。で、最後の締めは「主の祈り」、片仮名では「ローズ・プレイヤー」です。ノリノリから一転、敬虔なムードが漂います。ヘベレケ観客も思わず神妙な顔つきとなって、マヘちゃんの歌声にじっと聞き入っております。この映画でいちばん感動的なシーンでありまして、いやあ、大トリが鳳啓介じゃなくてよかったですなぁ。危うくフェスティバルがブチ壊しになっちゃうところでした。で、映画はマヘリア・ジャクソンの後ろ姿で幕を閉じるわけですが、そこにかぶさる “END OF A SUMMER’S DAY” の文字。最高にクールなエンディングなのでありました。おしまい。


( おしまい♪ )


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