第13話 「名と実と。」

(2008年03月16日更新)


 貰ってもさほど嬉しくない…というか、むしろ迷惑だったりするお土産というのがありますよね。例えば、夫婦岩の置物とか。僕は小学校の社会見学で伊勢志摩に行った時、自分用にひとつ買ってしまったんですが、大人になった今、冷静な目で振り返ってみると、アレは余計な買い物だったという気がしてなりません。あんなもの部屋に飾ってみたところで何の得にもならないし、たいしてオシャレでもないし、むしろ邪魔臭いだけだったりしますからね。当時の僕はまだ小学4年生で物事の善悪が分かる年齢には達していなかったので、ま、やむを得ないところではあるんですけど。 そんな僕も小学6年生になると分別が付いて、修学旅行で京都に行った時は金閣寺の置物を買ったりしたわけなんですが、僕はけっこう好きなんですよね、金閣寺。 “きんかくし” というのも嫌いではないんですけど。 で、邪魔なだけで何の役にも立たない夫婦岩の置物はどうなったのかというと、幸いにも小学5年生の時に火事になって、家もろとも焼けてしまったので何よりでしたが、何故かその際、ポータブル便器だけは焼け残ったりしたんですけど。 “きんかくし” ではなく、洋式タイプの こんな形 のやつだったんですが、ほとんど丸焼けになってしまった2階にあって、こいつだけほぼ無傷で生き延びたのはサバ家の7不思議のひとつに数えられております。後の6つに関しては、ま、おいおい暇をみて考えておくとして。

 お土産も自分用に買ったものなら、たとえそれがどんなにしょうもないものであっても、 「魔が差した。」 とか 「若かった。」 とか 「アホやった。」 とか、そういう言葉で片付けることが出来るんですが、人様に差し上げるものということになると、かなり慎重に吟味しなければなりません。人には必ず “好き嫌い” があるので注意が必要なんですが、希に嫌いな食べ物とか趣味に合わない品物とかを貰ったりすると、相手にこれっぽっちも悪意がないことは承知していながら、これは俺に対する挑戦か?…とか思ってしまいます。これは何もお土産に限らず、例えばクリスマスや誕生日のプレゼントにも同じことが言えるんですが、そういえば、僕の誕生日の3月19日がもうすぐそこに迫っておりますな。サバさんにどうしてもプレゼントをあげたい!…というギャル系読者のために、僕が貰って嬉しいものと迷惑なものとを、簡単に列記しておこうと思うんですが、まずは手づくり系。これはもう、大歓迎です。サバさんのために、心を込めて夫婦岩の置物を作ってみたのぉ♪…ということであれば、僕は喜んで受け取ります。もしかしてこれは、僕と夫婦(めおと)になりたいという事なのか?…と、深読みしたりもします。そんな気がさらさら無いのであれば、夫婦系の手づくりグッズは避けたほうが賢明かも知れませんが、手づくりのケーキとか、きなこ味のクッキーとか、そういうところが無難かも知れません。食べ物以外ということなら、あまりにも定番過ぎるかも知れませんが、手編みのマフラーなんかが嬉しいですな。ま、これから春になって暖かくなってくるので、誕生日のプレゼントとしてはあまり欲しくはないんですけど。編み物が得意なギャルには申し訳ないんですが、とりあえず今年のクリスマスまで待って貰うとして。

 一方、ありがたくなくて、むしろ迷惑に思ってしまうものはと言えば、僕の場合は断然、珍味系でありますな。僕は珍味が苦手です。どうしてなのかというと、あまり美味しくないからなんですが、 “美味” ではなくて “珍味” ですからね。ただ珍しいだけで、とても美味とは思えないような食い物が大半だったりするんですよね、珍味。 僕が珍味で美味しいと思うのはイカ系くらいでありまして、子供の頃、遠足や社会見学の際には必ず全珍のイカの姿フライを持っていってました。社会見学で伊勢志摩に行った時には、お土産に “のしイカ” を買いました。のしイカと夫婦岩の置物と生姜糖。この3点で持っていったお小遣いの大半を浪費してしまったような気もするんですが、そういえば子供の頃は “紋次郎いか” というのもよく買って食べてましたな。 そんなイカ好きの子供だった僕も、イカす大人になった今ではイカ系の珍味がさほど好きではなくなってしまったので、誕生日のプレゼントに “よっちゃんイカ” とかを送ってこないで欲しいんですが、さてここで僕がちょっと文句を言いたいのは、忘年会のお土産は、もうちょっとよく考えて欲しいということなんですけどね。忘年会で何故、お土産が出るかということについて、少し説明が必要かと思いますが、うちの会社の忘年会はここ数年、岐阜の長良川温泉というところで行なわれることになっております。ホテルで宴会をして、希望者はそのまま宿泊も出来ることになっているんですが、社員の慰労という名目で、お泊りの費用も会社で負担してくれます。いや、いい会社ですね。平井社長、万歳!

 一方、希望をしない人はそのまま帰ることも可能なんですが、となると、宿泊者と非宿泊者とでは会社が負担してくれる金額に差が生じることになってしまいます。そこで、うちの所長が気を遣って、お泊りしない組にはホテルの売店で買ったお土産を手土産として持たせてくれることになっているんですが、いや、いい所長ですな。徳田所長、万歳! で、僕は例年、お泊り組として参加していたんですが、去年の忘年会はですね、翌日に遊びに行く予定が入っていたものだから、お泊りせずに手土産を貰って帰ることにしたんですけどね。 さてそこで、昨日の夕食です。予め 「今日は豚汁(ぶたじる)やで。」 ということを聞いてたので、僕はウキウキしながら家に帰ったんですが、けっこう好きなんですよね、豚汁。好きな汁物は豚汁で、好きな南米の国はブラジル。でもって、好きな下着はブラなんだけど、パンツも同じくらい好きなんだよね♪…という趣向の僕にとって、ご飯と豚汁さえあれば、他に何にもおかずが無くても全然オッケーなんですが、昨日はですね、食卓の上におかずが一皿余計にあったんですよね。何かと思ったら小魚…よりは少し大きめの、ちょっと大きめの小魚の甘露煮のようなものでありました。僕の嫌いなタイプのおかずです。 思わず 「何やこれー!」 と、不満の意を表明したところ、 「アンタがもうてきたヤツやん。賞味期限3月までやで、もう食べなあかん。」 との返答で、それで思い当たるものと言えば、忘年会の手土産くらいしかありません。中身を確認しないでそのまま渡していたんですが、よりによって “ちょっと大きめの小魚の甘露煮” で、それが今頃になって出てくるとは! 売店で売られていたお土産の中ではかなり高価な部類だったのかも知れませんが、これならまだ “うまい棒の詰め合わせ” とかのほうが、どんなに嬉しいことか。

 とまあ、何故そんな話を書いたのかというと、この (↓) 漫画

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 1コマめの、口におさかなをくわえているネコの絵を見て、そういえば昨日、こんな感じのサカナを食わされたんや!…ということを思い出して、改めてちょっとムカっとしたからなんですが、長良川温泉だから鮎の甘露煮だったんですかね?今ひとつ鮎っぽくない、ちょうどこの漫画に出てくるような平たい系のちょっと大きめの小魚だったんですけど。 で、今回の作品のテーマは、僕の好き嫌いの話とはまったく何の関係もなく、 “名と実” ということになるのではないかと思うんですが、 “名と実” 、略して “名実” と言ったりもします。えーと、名実、名実…。特に何も思い浮かばなかったので、ここで簡単にジャズのアルバム作りについて触れてみたいと思うんですが、ジャズというジャンルの音楽は概ね、1人〜大多数といった構成で演奏されることになります。1人でやるのをソロ、2人だとデュオ、3人がトリオで、イカ、いや、以下、カルテットクインテットセクステット…と続きます。このセクステットというのが何だかいやらしく、人前で大きな声で口にするのがちょっと憚られたりもするんですが、それはともかく、3人から8人までくらいの集団のことをコンビネーション・バンド、略してコンボと呼んだりします。何となくコンガとボンゴと昆布とコソボ自治区とが、ごっちゃになったような名前なんですが、それに対して大多数の人が群れ集っている集団のことをビッグバンドと言ったりします。コンボにしろ、ビッグバンドにしろ、その楽団を統制して引っ張っていく立場の人が約1名いたりするんですが、その人のことをリーダーと呼びます。僕たちが学生の頃、英語の授業はリーダー (読本) とグラマー (文法) に分かれていて、グラマーのほうは何となく巨乳の女教師が教えてくれそうなイメージがあったものなんですが、実際は禿げたオッサンとかが教えてくれるだけだったんですけど。 で、ジャズの場合、リーダーに対する言葉はグラマーではなくてサイドマンということになるんですが、言わば主役に対する脇役の立場の人たちですよね。ただジャズの場合、特に管楽器やピアノを担当する立場の人はリーダーと同じくらいソロのスペースが回ってくることも少なくないので、アルバムを購入する場合にはサイドマンの人選にも注意を払う必要があります。

 リーダーには概ね、実力があって統制力があり、おまけに大の目立ちたがり屋である人が自主的に自分から言い出してなることが多いんですが、そういうキャラの人が2人いる場合には、共同でグループを引っ張っていくことになります。そういう形態の集団を双頭コンボとか双頭バンドと呼ぶわけですが、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットなんてのがその一例です。ブラウンとローチの間にある “=” が、2人の立場が対等であることを示しているんですが、ビッグバンドだとサド・ジョーンズとメル・ルイスのサド=メル楽団なんてのが有名です。どうしてサド・ジョーンズは、マゾ・ルイスという名前の人と組まなかったのか?…という問題は “ジャズ界の7大がっかり” のひとつに数えられているんですが、一方、自由・平等・博愛の見地から特定のリーダーを儲けないグループというのもあります。モダン・ジャズ・カルテットM.J.Q.) なんてのがそうです。ただ、このコンボの場合も名目上は4人が対等な立場ということになってはいるものの、実質的なリーダーはジョン・ルイスであると言われておりまして、ここに “名と実” という問題が出てくるわけです。

 演奏するほうの立場からすると、統制力があって目立ちたがり屋の人がリーダーになって、気の弱いタイプの人はサイドマンに甘んじる。…ということに落ち着くんですが、これがアルバムを作成する立場からすると、微妙に状況が違って来ます。売るほうの立場としては、出来るだけ人気があって、セールスの期待出来る人をリーダーとして前面に押し出して販売戦略を進めていきたいところですよね。そこで、人気のあるミュージシャンと専属契約を結んでリーダー作を独占的に販売するという策に出るわけですが、1958年当時、マイルス・デイビスはコロンビアとの専属契約を結んでおりました。1952年頃、麻薬中毒でラリラリだったマイルスにレコーディングの機会を与えてサポートしたブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンは、もう一度、どうしてもマイルスのアルバムを吹き込みたいと思っておりました。が、契約の縛りがあって、彼のリーダー作を作ることはままなりません。縛りなんてのは一部の変態を除けば、ぜんぜん悦ばしいものではなかったりしますからね。困ったライオンくんは悩んだ挙句、とある秘策を思いつきました。キャノンボール・アダレイというアルト吹きを名目上のリーダーに仕立て上げて、マイルスはサイドマンとして参加させることにして、実質的にはマイルスのリーダー作を作っちゃおう! サイドマンとして契約外のレーベルに吹き込むことに関しては、わりと寛容だったようですな。脇役でも駄目!…と言われて、こっそり変名で参加というパターンもあったようですけど。 とまあ、そのようにして吹き込まれたのが 『サムシン・エルス』 という1枚であるわけですが、僕がまだジャズに初心者だった頃、マイルスの 「枯葉」 は、いいっ!…という噂を聞きつけて、その演奏の入ったCDを手に入れようとしたところ、それがキャノンボールなどという怪しい名前のオッサンのアルバムだったりして、ちょっと混乱したような記憶があります。

 とまあそれはそうと、この漫画に登場するパパ猫、昼間っからサカナを肴に道端で、サッポロの缶ビールを飲んだりしているのは如何なものかと。夜は夜でジャズバー 『ねこはうす』 で生ビールを飲んで、マスターのプトレマイオス・よしおを相手にクダを巻いてるみたいだしぃ。 このコーナー、かなり久しぶりの更新なので、さりげなく登場人物…というか、登場ネコ物のおさらいをしておきましたが、これでは “名ばかり亭主” として、家庭の実権を奥さんに握られたりするのもやむを得ないところではなかろうかと。奥さんネコ、なかなかしっかりした良妻賢母タイプに見えますもんね。 人一倍…というか、人二十倍くらいプライドの高いマイルスがサイドマンという立場に甘んじることを受け入れたのは、彼がキャノンボール・アダレイというミュージシャンを尊敬していたからだと言われておりますが、この奥さんネコも裏ではこんなことを言っておりますが、心の中ではパパのことをけっこう尊敬していたりするのかも知れません。 名目上でもパパをしっかり “主人” として立てておいて、脇役として影で彼を支える。この2人はこう見えて夫婦岩のように “絆” という太い注連縄でしっかりと結ばれているのかも知れません。 とまあそんなことで、今日のところはおしまい♪


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