第10話 「文句言わない。」

(2007年05月31日更新)


 最近、エロエロなところでJAZZを耳にすると思いませんか? 僕は思いません。 というか、僕はエロエロなところなど一度も行ったことがないので、果たしてそこでJAZZが流されているかどうか、確認する手立てがないわけなんですが、ところで最近、いろいろなところでJAZZを耳にすると思いませんか?…という質問であれば、僕は明確に、言われてみればそうかも知れないね。…と答えることが出来ます。確かに最近、いろいろなところでJAZZが流れていたりしますよね。 いろいろなところというのは、具体的にはお店の中、それも飲食店の類を言ってるわけなんですが、JAZZが流れている飲食店というのは、少なくとも北島三郎の 「風雪ながれ旅」 が流れている店よりは多いと思います。 試しに “飲食店 ジャズ” でググってみたところ、約411,000件もヒットしたんですが、 “飲食店 風雪ながれ旅” では、たったの58件しかヒットしませんでしたもんね。 この業界におけるサブちゃんの不人気ぶりは目を覆うばかりでありますが、ま、ジャズを流している飲食店といっても、本気でそのジャンルに取り組んでいる店というのは、ほんの一握りなんですけどね。 おにぎり屋の店主とか、寿司を握っている職人とか、豆腐屋だとか、そんな一握りの人が個人的な趣味でジャズを流しているだけで、大多数の店では 「ちょっとお洒落な感じがして、いいかな?」 …といった程度の軽い気持ちでBGMにジャズを採用しているというのが実情なのではないかと思います。

 それはそうと、おにぎり屋や寿司職人はまだ分かるとして、どうして “豆腐屋” が一握りの中に入ってるんや?…と疑問に思われた人もいるかも知れません。豆腐を作るには “にがり” というのを使うから、 “握り” の仲間に66.7%くらいは加えてみてもいいかな?…という僕の個人的な判断によって仲間に入れておいたんですが、言われてみれば確かに、ぜんぜん関係なかったですよね。 ジャズに本格的に取り組んでいる一握りの店として、豆腐屋は除外しておこうと思いますが、となると “ムード派” の割合がより増えるということになりますか。 そういう店では当然、店主がジャズのレコードを所有しているわけではなく、普段、家でよく聴いているのは中川翔子の 『しょこたん☆かばー “アニソンに恋をして” 』 だったりするので、店で流すのは有線放送ということになるわけですが、有線と言うのは飲食店に限らず、床屋なんかでもBGMとして採用されていたりしますよね。 僕が子供の頃からずっと通っている萱町の太田理○店にもあります。 僕は子供の頃からずっとこの床屋に通っていて、待ち時間に少年ジャンプを読むのが楽しみだったりしたんですが、最近では電話による予約制になって、待ち時間が無くなった代わりに漫画雑誌を読むことが出来なくなって、おかげで僕は最近のジャンプ事情にはめっぽう弱かったりするんですが、 『ジャングルの王者ターちゃん』 の時代で止まってたりしますからねー。 とまあそれはともかく、予約制になってからは日曜日の午前10時とか10時半頃に床屋に行くというパターンが多くなりました。 その時間に行くとテレビで 『サンデープロジェクト』 が流れていることが多いんですが、僕は田原総一朗が田原俊彦と同じくらい好きではなかったりするので、ちょっと不愉快な気分になってしまいます。

 でもまあ、チャンネルを変えてくれと頼むのも面倒な話なので、いつもそのまま放置しているんですが、ごくたまに店のオバハンの気まぐれで、テレビが消されて有線放送が流されることがあるんですよねー。 店のオバハンは、 「若いコは、こういうのがエエよねー。」 と勝手に決め付けて、僕の意向をまったく無視してJ−POP系のチャンネルにセットするのが常なんですが、いや、僕はオトナだから…というか、チャンネルを変えてくれと頼むのも面倒な話なので、特に文句を言ったりはしないんですけどね。 ただ、不満の意が相手に伝わないというのちょっと癪な話なので、抗議の意味を込めて寝たふりをすることに決めているんですが、今日ばかりはなー、この場を借りて、ちょっと言わせて貰うで、オバハン!

 僕はなー、こんなん聴きたくないねんっ! 家ではジャズしか聴かへんねんっ! ま、最近は 「ケロッ!とマーチ」 とか 「アフロと軍曹」 なんかを聴いたりもするけどなー、それに僕なー、もう “若いコ” とちゃうねん!もうすぐ40やねんっ! で、僕が働いてるとこなー、ちっとも “大きいとこ” ちゃうねんっ! おまけに経営不振で、もうすぐ潰れるねんっ!!

 あ、最後の部分はですね、三連休の真ん中の日曜日に床屋に行って、「明日も休み?」と聞かれて、「んー。」と答えると、オバハンに必ず 「大きいとこはねー!」と返されるという、その問題について言ってるわけなんですが、このオバハンはどういうわけか、僕がかなり大きな会社に勤めていると勝手に思い込んでいるんですよね。 何かとウザいオバハンなので、何度か店を変わろうと思ったこともあるんですが、取り柄と言えばお駄賃に森永のチョコボールをくれることくらいですからね。 それがある年、確かあれは僕が高校生になった頃ではなかったかと思うんですが 「もう子供やないから。」 という勝手な理由によって、お駄賃がチョコボールから “試供品のシャンプーの小袋” に強制的に変えられたことがああったんですよね。 さすがにその時ばかりは、マジでもう、この店はやめよう!…と思ってしまったわけなんですが、違う店に行くというのも何か面倒な話ので、そのままズルズルと通い続けていたところ、本格的な大人に成長した頃になって再びお駄賃を元のチョコボールに戻してくれたので、渋々ながら今でもここに通っているわけなんですけどー。

 とまあ、ここまで長々と無駄な行数を費やして、いったい何が言いたかったのかというと、ジャズをBGMに流している店は多いけど、どうせ有線なんだよね。…と、要約してしまえば30文字くらいで済んでしまう内容だったりするわけなんですが、では果たして、このお店の場合はどうなんでしょう?

↓↓ CLICK ↓↓



(※クリックすると漫画のページが開きます。)


 いや、さすがはマスターのプトレマイオス・よしおが自らピアノの腕を振るうこともある本格的ジャズ・バー 『ねこはうす』 だけあって、そう言えばこの店って、そういう名前だったんだよね。…という問題はとりあえず置いといて、BGMを有線に頼るような安易な真似はせずに、きっちりと自前の音源を確保している模様でありますな。 こういうシステムの店の場合、その選曲にマスターのセンスが如実に反映されることになるんですが、あまり個人の趣味に走りすぎて、一日中ずーっとアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハばかりを流したりしてると、 「まーた、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハかー!」「ここ、いつ来てもアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハばかりよねー。」「またどうせ次もアレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハやろなっ!」 ということになって、客としてはミュージシャンの名前を連呼するだけで、ぐったり疲れることになってしまいます。 ここは是非、顧客のスタミナという点にも考慮して、なるべくなら短い名前のミュージシャンを選んで欲しいところです。例えば、ベーシストだったらニールス・ヘニング・オルステッド・ペデルセンをかけたいところを、ぐっと我慢してロン・カーターにしちゃうとかー。

 で、このお店の場合、客からのリクエストも受け付けているようなんですが、こうなると、リクエストする側のセンスというか、空気を読む能力というのが試されることになりますよね。 特に客の中に若いギャルがいたりする場合、それなりの配慮が必要となってくるわけなんですが、僕だったらそうですね、無難なところで、ピアノ・トリオの作品を選ぶでしょうな。間違っても漫画トリオを選んだりはしません。 パンパカパ〜ン、今週のハイライト!…では、ギャルは口説けません。 口説けないから横山ノックとしてもセクハラという強行手段に出るしか無かったんだと思うわけなんですが、ピアノ・トリオだったら大丈夫。 僕だったらそうですね、あまりにもありきたりかも知れませんが、ビル・エバンスをリクエストしますね。 ただ、 『ワルツ・フォー・デビー』 ではあまりにも素人っぽいので、ここはひとつ 『エクスプロレイションズ』 といきますかね? もうひとつ “ひねり” を入れるとすれば、同じエバンス系とうことで、ドン・フリードマンの 『サークル・ワルツ』 を持ってくるとかー。 プトレマイオス・よしおともなれば、音源はCDではなく、オリジナル盤のレコードで揃えているに違いありませんが、 “Now Playing” として店内に掲げられることを考えると、ジャケットのセンスも考慮に入れなければなりません。 ケニー・ドーハムの 『静かなるケニー』 というアルバムはサウンド的には静かにお酒を飲むには最適な1枚だったりするんですが、ジャケットの思いきり間延びしたドーハムの顔を見ると、一気にロマンティックなムードを削がれてまうことになりますからね。 ここはやはり、ジャケットが微妙にエロエロだったりする 『サークル・ワルツ』 がベストな選択ということになろうかと。

 といった僕の深慮遠謀とは裏腹に、この兄ちゃんは何にも考えずにリクエストしちゃったんですな、セロニアス・モンク。 あまりにも配慮に欠ける軽率な行動であったと言わざるを得ませんが、ま、リクエストした時、ギャルはまだ店には来ていなかったという事情を差し引いても、いくら何でもソレはないやろ、『サムシング・イン・ブルー』。…と思わずにはいられません。 それがいかに間違ったリクエストであるかというのは、僕が未だにこのアルバムを所持していないという事実からもよく分かっていただけるかと思いますが、まったくソソられるものがないんですよねー、これ。 ほら、これ でっせ! …と、通販サイトだから、いつまで見られるのか分かったものではないページへのリンクを貼っておきますが、このむさ苦しいジャケットを目にした時点で、演奏内容に踏み込むまでもなく、パスですな、こりゃ。 売価 (税込) 1,300円と、かなりお値打ちな価格なんですが、それでも欲しいとは思わないし、こちらの商品は既に売却済みです。現在は購入できません。…と書いてあっても、少しも残念な気がしませんな。よくぞ売れてくれた!…と、思わずにはいられなくて、もし売れ残っていたりしたら、血迷ったり、魔が差したりして、思わず買っていたかも知れませんもんね。いやあ、危ないところでした。

 モンクと言う人はジャズのビック・ネームの中では群を抜いて毀誉褒貶の激しい人なんですが、正直なところ、僕もあまり好きではありません。 ラズウェル細木の漫画にも、パーカーはレロレロいってるばっかで、モンクは聴いてると腸捻転おこしそーになるし、ギル・エバンスなんて骨と皮だけのタダのジジィだろっ!…といった暴言が出てくるわけなんですが、ま、そうは言っても、そこまで言う事はないうやろ、ネーチャン!?…という気がしないでもありません。 僕は常に、どんな時でもギャルの味方であろうと心掛けているワケなんですが、このギャル猫の場合、いくらなんでも言い過ぎではないかと思うんですよね。 「アンタもいっちゃってるの〜?」 というのは、明らかに暴言だと思います。 スキーの基本はボーゲンなんですが、暴言というのはよくありません。 ちなみにボーゲンというのはスキーの板を “ハ” の字にして滑ることを言うんですが、僕の場合、コケた時に両足が平仮名の “は” の字みたいな形になって、左下腿骨を骨折してしまったんですが、それはそうと、あまりにも場違いなリクエストをしてしまったアホな兄ちゃんと、あまりにも気が強すぎるギャル猫との対立によって、店には一触即発の危険な空気が漂い始めるワケなんですが、果たして、この結末は…?

 “”“”ときて、 “” の部分でいきなりコレかいっ!…と、僕はこの漫画を見てかなり激しく脱力してしまったんですが、いや、このマスターの場合、場の空気を読めてるんだか、まったく読めてないんだか…。 それはそうと、このギャル猫、めっちゃ気は強いんだけど、けっこう巨乳ですよねー。 暴言癖さえ直ったら、けっこう可愛いギャルなのかも知れませんなー。 お嬢さん、気を取り直して、僕と一緒にハービー・ニコルスを聴かないかい?…って、いちばん空気を読めてないのは、アンタやっ!!


INDEX
BACK NEXT