第6話 「インタープレイな関係」


  くもりガラスを手で拭いて あなた明日 (あした) が見えますか〜♪

 その昔、大川栄策は 「さざんかの宿」 の中で、このように歌っておりました。それを聞いて子供だった僕は、アホちゃうか?…と思いましたね。 んなもん、見えるわけないやん。 そもそも栄策クンは “くもりガラス” というものを、今ひとつよく理解していないように思われます。 一度ちゃんと辞書を引いて、その意味を調べておいたほうがいいのではないですかね? するとそこには恐らく、金剛砂などで面をすり、または弗化水素酸で腐食させて、光沢を消した不透明なガラス。…といった説明書きがある筈です。 いや、しかしこんなところで “金剛” などという漢字を目にするとは思いませんでしたな。 金剛というのは “金剛力士像” といった仏像関係にしか使われない用語だとばかり思っていたんですが、ガラス業界でも使われていたんですね。 ちなみに金剛力士像というのはどういう仏像なのかというと、金色をしていて長渕剛の歌が好きな相撲取りの像なんだよね。…というのが僕の理解なんですが、最近、カラオケでは 「巡恋歌」 しか歌っていない僕としては何だかとっても親しみの持てる仏像でありますなぁ。

 …と思っていたら、ぜんぜん違ってました。 金剛力士像というのは金ピカでなければ、ナガブチ好きでもなく、しかも相撲取りですらない、ただの仁王像なんだそうでありまして、いや、こんなヤツに親しみを持ったりして、とんだ時間の無駄遣いでありましたな。 もう、コイツのことは無視することにして、話を金剛砂のほうに進めてみたいと思うんですが、これは恐らく、金色をしていて長渕剛の歌が好きな砂なのではないか?…というのが僕の予想なんですけどね。 が、調べてみたらぜんぜん違っておりまして、どうも今日は僕の予想が裏目に出る傾向にあるようですが、金剛砂というのはガーネットのことなんだそうですね。 ガーネットといえば宝石の一種でありまして、 “ジャパネットたかた” の通販で買ってもデマントイドガーネット(重量 3.52CT 寸法 9.2x9.3x5.8mm )というのが 2,200,000円もしたりするんですが、日本語では “ざくろ石” とも言って、それが砕けて砂みたいになっちゃうと “金剛砂” ということになるんでしょう。 ちなみに発音としては “かねつよしずな” ではなくて “こんごうしゃ” と読むのが正解みたいです。 くもりガラスのことを別名 “すりガラス” と言ったりするのは、この砂で擦ってガラスの表面に傷を付けて、向こう側が見えないようにするからなんですね。

 機械的に擦る以外に、化学的に溶かすという方法でも “くもりガラス” は作れるみたいですが、いずれにせよ金剛砂とか弗化水素酸を使って向こう側が見えないように加工するわけですからね。 手で拭いたくらいで向こう側が、ましてや“明日(あした)”なんかが見えるはずが無いやん、栄策ぅ〜! という事は、子供でも分かることだと思います。 が、大人になってよくよく考えてみるとですね、栄策が言ってることも、完全に間違いというわけではないな。…という気もして来たんですけどね。 “くもりガラス” というのは何も金剛砂や弗化水素酸で加工したものだけに限らず、湯気で一時的に曇ったガラスのことも、そのように称していいのではないか?…ということに気付いたわけなんですが、それだったらアレですよね。その湯気を手で拭いてやれば、向こう側が見えたとしても、ぜんぜん不思議では無いですよね。 問題はそれで “明日(あした)” が見えるかどうかなんですが、絶対に無いとも言い切れません。 例えばそれが湯気で曇った八百屋さんの窓ガラスだったとしたら手で拭くことによって、 “明日(あした)” はまあ、ちょっと無理だとしても、 “あしたば” くらいは見えるかも知れません。健康野菜として、ちょっとしたブームですからね。 ま、くもりガラスを手で拭いて “あしたば” が見えたところで、さほど嬉しいものでもないんですけど。

↓↓ CLICK ↓↓



(※クリックすると漫画のページが開きます。)

 で、この漫画と、さっきの話と、いったい何の関係があるの?…と疑問に思われるかも知れませんが、実を言うとまったく何の関係もありません。 関係があるのは 「さざんかの宿」 の、この続きの部分でありまして、

  愛しても愛しても ああ人の妻〜♪

 そう、このフレーズです。 人妻に人気のジャズ・ピアニストと言えば、何といっても ビル・エヴァンス だよね。…ということを言いたいが為に、わざわざ “あしたば” の話まで持ち出して行数稼ぎを図ったわけでありますが、僕は人妻と呼ばれる人から、 「お薦めのジャズのアルバムって、何カナ?」 …と、語尾の部分を片仮名にして聞かれた場合には、必ずエヴァンスの 『ワルツ・フォー・デビー』 を薦めることにしております。 もう、僕の頭の中では “人妻=わるでび” という構図が完全に出来上がっているんですが、人妻漫画家のわかこりんは、エヴァンスとスコット・ラファロとの間にホモ関係を見出しながら、この演奏を聴いていたというわけなんですな。 確かにこの2人のあまりにも緊密にして親密な関係は “インタープレイ” などと呼ばれ、僕は何だか放置プレイとか、羞恥プレイといったアブノーマルな世界を頭に描いてしまうわけなんですが、この2人にドラマーのポール・モチアンを加えた “3P” も見逃せないところでありますな。 僕はどちらかと言うとラファロとのインタープレイよりも、 『エクスプロレイションズ』 収録の 「ナーディス」 で聞かれるようなエヴァンスとモチアンの絡みが好きでありまして、和菓子好きの人妻には是非、餅餡の美味しさを楽しんで頂きたい思っております。

 で、話をラファロに戻しますが、二人の蜜月は長くは続きませんでした。というのも、スコット・ラ・ファロは1961年、わずか25歳という若さで交通事故のために命を落としてしまうんですよね。 その知らせを聞いたエヴァンスの哀しみはいかばかりであったでしょう? 噂によると、哀しみのあまりエヴァンスはしばらくイカばかり食べていたそうですが、イカ刺しとか、焼きイカとか、イカと里芋の煮付けとか、おつまみ系だとイカの姿フライとか、駄菓子系だと “よっちゃんイカ” とか。 ま、それだけ食欲があればそれほど心配することは無いんですが、実を言うと音楽的な相性はともかくとして、エヴァンスとラファロは、普段はあまり仲がよく無かったという噂もあったりするんですけど。 が、その噂が根も葉もないガセネタであったというのは、わかこ漫画の2コマ目を見れば一目瞭然でありまして、天国での再開を喜び合う2人の間に飛び交う “” の数が半端ではありません。 エヴァンスが天に召されたのは、ラファロの死から幾星霜を重ねた1980年のことでありまして、20年という歳月が生前のわだかまりを綺麗に拭い去ったのかも知れません。 何でもいいけど極度の猫好きである僕としましては、お布団に入って大人しくお父さんのお話を聞いている娘のアユちゃんが、たまらなく可愛いニャ〜♪ と思わずにはいられませんが、いや、ルックス的にお茶目としかいいようのないこの二人の親から、よくこんな可愛い娘が生まれたものですなー。

 で、お父さんのプトレマイオス・よしおからは、見た目の点であまり高い評価を得られていないジョン・ルイスとミルト・ジャクソンの二人でありますが、人妻向けのジャズお薦め盤として、僕は “MJQ” の名前も挙げておきたいと思っております。 とりあえずまず最初に 「 “MJQ” というのは “モダン・ジャズ・カルテット” の略なんだよ。」 という薀蓄で、人妻の 「へぇ〜。」 という感心の声を聞くことが出来るし、続いて 「ミルト・ジャクソンはヴァイブという楽器を演奏してるんだよ。奥さん、ヴァイブ好きでしょ?」 という話題で、 「いや〜ん♪」 という人妻の嬌声を楽しむ事だって可能です。 いや〜、何だかとっても楽しいな♪

 ということで、今回のお話はおしまい。


INDEX
BACK NEXT