『 トムとジェリー(第1巻)@その1 』



 さ、今週から新コーナーです。拠所ない事情と言うか、やむにやまれぬ必要性に駆られてと言うか、とにかくまあ、DVDプレイヤーを買ってしまったわけなんですが、プレイヤーを買えばソフトが欲しくなるのが人情です。で、ソフトを買って鑑賞すれば、それをレビューしたくなるのがライターとしての性(さが)というか、サカナとしての鯖(さば)というか、とにかくまあ新コーナーです。で、コーナーを名前を考えるにあたって、僕は悩みました。DVDソフトのレビュー企画なので“DVD”という文字を入れよう。…というところまではすんなりと決まったんですが、ところで“DVD”って、何の略なんすかね?“ドメスティック・ヴァイオレンス・段田男”とかですかね?「玄界灘」のヒット…というか、名前のマヌケさ加減でちょっぴり話題に上ったものの、その後は鳴かず飛ばずで、ヤケ酒を飲んでは奥さんに暴力を振るう男、段田男。その生き様をアルファベット3文字で簡潔に表現したのが“DVD”…なワケがないですね。ごく単純に“デジタル・ビデオ・ディスク”か何かの略でしょう。…と思ったら、最近はもっと広範囲な意味合いを持たせて“デジタル・バーサタイル・ディスク”の略としていることが多いようですね。ビデオだけじゃないぜ。もっとバーサタイル(広範囲)な使い方があるんだぜ。…ということを言いたいようなんですが、そこでまあ、コーナー名としてまず考えたのが、『DVDでポン♪』とか、『DVDでぴょん♪』とか、『DVDだぴょー♪』とか。しかし何ですな。我ながら胸にグッと来るものがない安易極まりないネーミングでありますな。これではDVD鑑賞好きギャルのハートを射止めるのは、とうてい無理ではないか?…という気がしないでもありません。ここはひとつ、知的で“urban”なセンスが求められるところですね。痴的で“urabon(裏本)”というのでは駄目です。そこでまあ、考えたのがコレなんですけどね。

“Daddy Very Daffy”

 お父さんはかなりとんま。うん、いいですな。韻を踏んでいてエスプリもきいている上に、略すとちゃんと“DVD”になるところに禅味が感じられますよね。ただ、まったく意味がないところが難と言えば難なんですが、インドのパンはナンだしぃ。ということで、ま、コーナーの名前なんて別にどうだっていいですよね。

 そこでまあ、ネット通販でDVDのソフトを何枚か買うことにしたんですが、いや、現状では僕の持っているソフトは『援助交際Vol.1』と、『援助交際Vol.2』と、『純情美少女的AV・Angel きょうこ』の3枚だけですからね。こういう類のソフトはレビューしてみたところで、「モデルはまあ、美少女と呼ぶにヤブサカでないレベルには達しているものの“純情”と呼ぶにはやや語弊があり、だいたいすけべDVDに出演しておいて“純情”はないやろ?…ということからして無理があると思うんですが、いずれにせよモロ見えではなかったので、がっかりしました。おしまい。」…って、わずか2行ほどで終わってしまいますもんね。いけません。で、新しいソフトを買うにあたって僕はしばし考え込んでしまったんですが、僕って別段、すけべ以外で見たい映像って、ほとんどないんですよね。テレビもほとんど見ないし、映画に至っては高校のキリスト教倫理の時間に視聴覚教室で見た『イエス・キリストの生涯』『未成年の性』の2本立てが最後じゃないっすかね?のぶお君はる子ちゃんの活躍ぶりは、もう一度DVDで再鑑賞するにヤブサカでない気はするんですが、残念ながらこの作品は市販されてないようでありまして、しかたがないので第2候補として購入することにしたのが『トムとジェリー』でありました。いやあ、子供の頃、好きだったんですよね。特に「人造ネコ」というのがよかったです。腎臓結石に苦しむ人にとってはバイブルとも言える作品ではないか?…という気すらするんですが、いや、ぜんぜん関係ないんですけどね、肝臓。で、ぜんぜん関係がないので話が続かなくなってしまいましたが、『トムとジェリー』というのは(すけべ以外の)はぢめてのDVD作品としては、ま、無難なセンじゃないっすかね?ただ、この作品にはひとつ懸念材料がありまして、それは何かというと、「ビデオと同じなんぢゃないか?」ということなんですけどね。以前、塩サバ2号の家で『トムとジェリー』のビデオを見たことがあるんですが、大きな期待とは裏腹に、何かもうちょっと?…という気がしました。昔、テレビで見たほど、すんなりとアニメの世界に入っていけない自分に気付いたんですが、その違和感の原因は何か?…と考えてみたところ、その理由がわかりました。ビデオ版にはナレーションがない。…って、ただそれだけのことなんですが、この違いは意外と大きいですな。テレビ版には「今日もトムくんはお散歩中です。おやおやおやぁ?」…といった感じのナレーションが入っていたんですが、ビデオ版にはそれがありません。原作に忠実…ということなのかも知れませんが、誰が無くしてイイって言ったぁ?僕に無断で勝手なことをして貰っては困りますな。アレがないと何だかとっても物寂しくって、いけません。で、DVD版もビデオと同じだったら、ヤだな。…と思っていたんですが、やっぱりと言うか、案の定と言うか、当然というか、DVDもやっぱりナレーションなしだったので、かなりガックシきている僕でございます。ま、気を取り直して、1作目から見てみることにしますかぁ。


「 可愛い花嫁さん 」

 タイトルを見ただけではどういう話なのかピンとこなかったんですが、始まってすぐに分かりました。「ああ、コレね。」という感じですね。何せ、テレビで再々々々々放送くらいまで見てましたからね。えー、物語はまずトムくんがチーズをばら撒いて、ジェリーをおびき寄せようとするところから始まります。少年時代の僕たちはこのシーンから2つのことを学ぶことが出来たんですよね。すなわち、(その1)ネズミはチーズが好きである。(その2)アメリカのチーズは穴があいている。…ということなんですが、いや、バター好きというのは知識として持ち合わせていたんですが、ネズミがチーズ好きだとは知りませんでしたな。チーズって何だかウンコ臭いところがあって、コドモ時代の僕はあまり好きではなかったんですが、ネズミはそういうことはお構いなしなんですな。ある意味、幸せな性格であると言えましょう。で、常日頃、雪印の“6Pチーズ”とか“スティックチーズ”みたいなのしか見たことがなかった僕は、この漫画に登場する“穴あきチーズ”がカルチャーショックだったんですが、アレはいったいどういう種類のチーズなんすかね?オトナになった今でも僕はあのようなチーズを見たことがないので非常に気になるところではありますが、今は先を急ぎましょう。えー、チーズにおびき寄せられたジェリーが食パンを2枚組み合わせた罠にかかります。で、トムくんが食パンに挟んだジェリーに塩を振りかけて食べようとした瞬間、どこからか猛禽類がやって来て、サンドイッチ状のジェリーを奪い取ってしまいます。あ、学のある僕は思わず“猛禽類”などという難しい言葉を使ってしまいましたが、要はワシ・タカの類ですね。今回登場のキャラは恐らくワシではないかと思われますが、で、そのワシにジェリーを横取りされて、トムくんはムッとしちゃうわけです。もしトムくんが関西人だったら、「こら、ワシ!それ、ワシんや!」とか言うところですね。で、しばらくはワシとトムとの“ジェリー争奪戦”が繰り広げられるわけですが、しかし何ですな。こりゃ、今だったら間違いなく動物保護団体からクレームが来ますな。“ノバうさぎ”のコマーシャルですらイチャモンが付いたそうですからね。ノバうさぎがゴキゲンに歩いているといきなり耳を引っ張られて耳が取れてしまい、が、次の瞬間、耳がぴょこんと生えてきて、再びゴキゲンに歩き始める。…というのが問題のシーンなんですが、何でも「ウサギの耳は引っ張ってもイイんだぁ♪…とか、ウサギの耳は取れてもまたすぐに生えてくるんだぁ♪…といった間違った印象を与えてしまうところが、けしからん!」…ということらしいんですが、トムとジェリーの暴力シーンなんて、その比ではないですからね。聞いた話によると、何でもあまりにもバイオレンスで、おまけに人種差別的なシーンがあるので、テレビでの再放送は無理。もしくは、再放送するにしても面白くも何ともない“新・トムとジェリー”のほう。…ということになっているみたいですね。いやあ、残念ですな。僕はコドモの頃から繰り返し見てきたんですが、別段、とりたててバイオレンスな中年に育ってしまったという自覚はないので、別にイイと思うんですけどねぇ。。。

 で、物語はここで急展開を見せます。猛禽類にジェリーを取られたトムがそれを取り返そうとして、ある“作戦”を敢行します。その敢行する作戦というのが“カンコー学生服作戦”…ではなく、“お色気戦術”(←死語?)なんですが、トリの羽根と嘴を付けて“ワシのピチピチギャル♪”に変装して、ワシを誘惑しよう!…と企むわけです。こういう愚にもつかない作戦をやってみようと思いつくトムもトムですが、それに見事に引っ掛かってしまうワシのほうはもっと問題アリですな。目ん玉を皿のように飛び出させたりして、他愛のないものでありますなぁ。トムくんがワシを誘惑するシーンのバックでは「セントルイス・ブルース」が流れ、音楽センスのよさは特筆モノだと思います。で、見ていて気がついたんですが、DVD版はナレーションだけでなく、トムやジェリーの台詞も極限まで少なくなっているんですね。例えばワシが捕まえたジェリーを食パンに挟んで、ピーナッツバターを塗ろうとするシーン。ジェリーがバターナイフを取り上げて、自ら背中にピーナツバターを塗りつける時に、テレビ版では「ちょうど背中がカユかったんだよねー。」というような台詞があったと思うんですが、DVDでは無言でした。また、ワシから逃げ出そうとしたジェリーが見つかって、呼び戻されるシーン。肩をすくめたジェリーが「ネズミは諦めが肝心なんだ。」とつぶやいて、僕たちはそこで“諦観”ということの大切さを学んだものなんですが、DVD版のジェリーはここでも無言。いくら工藤静香「MUGO・ン…色っぽい」と歌ってるからって、もうちょっと検便でも、いや、もうちょっと能弁でもイイと思うんですけどねぇ。で、結局のところトムくんはジェリーにいいようにあしらわれて、無理矢理ワシのお嫁さんにさせられちゃう。…というのがオチなんですが、「マイ・ブルー・ヘブン」をバックにトムくんが卵を温めながらセーターを編んでいるシーンで、“The End”となります。ひとつ気になるのは、このタマゴ、誰が生んだ?…ということなんですが、やっぱり“可愛いお嫁さん”であるところのトム君なんすかね?いくら漫画とはいえ、そういう無茶が許されてもいいのか?…という気がしないでもないんですが、種や性別を超越した“”が生んだ奇跡なのかも知れませんね。しっかし、牡のワシと牡ネコのプレイって、やっぱり、獣姦ホモ


「 オペラ騒動 」

 あ、これはタイトルを見ただけで内容がわかりますね。ら〜、らららららら、ら〜ら〜ら〜♪…というヤツだよね?…と思っていたら、案の定そうでした。で、改めて見直してみると、絵がかなり下手ですな。かなり初期の作品なんすかね?漫画版の「サザエさん」でも“jazz giant”のジャケ絵でも、概して初期のものは絵が下手ですからね。今になって冷静に考えてみると、「今日のチェットは似てねーぞ。」と言われるのもやむを得ないかな?…という気もするんですが、「オペラ騒動」のトムもジェリーも今ひとつ可愛くないです。特にトムのほうは眉毛があるのが災いして、かなり可愛くないです。トムに眉毛なんかありましたかね?“オペラねた”だから敢えて眉毛ネコにしたのなら、その意図は明らかに失敗だと思いますが、ネタとしてはオペラです。トムがオペラを歌ってます。で、ドスドスとステージを踏み鳴らすものだから、ステージの下で寝ていたジェリーが目を覚まし、ムッとしてオペラ公演の妨害工作に走る。そんだけ。…というのがストーリーの全貌なんですが、しっかし、いつからジェリーはステージ下に住むようになったんすかね?家の壁にカマボコ形の穴を開けて、そこを棲み家にしているんじゃなかったすか?…と思ったら、トムとジェリーというのは特定のキャラではなく、アメリカのどこにでもいるようなネコとネズミを具象化したものである。…という説もあるみたいですね。つまり“可愛い花嫁さん”になったトムと、オペラを歌っているトムは、別のトムであると。だからトムの飼い主がいつも違うのも、こりゃ、どう見ても死んだな。…としか思えないような悲惨な目にあったトムが、0.2秒後には元気に走り回っていたとしても、それは違うトムだから不思議でもなんでもないと。なるほど。…という気もするんですが、やはり日本人としては今ひとつ納得がいきませんね。さっきのトムと今度のトムが違うトムじゃ、“回転アトムすし”はどうなるんだ!?…と思ってしまいますよね。いや、ぜんぜん関係ないっすけど。で、物語のほうはジェリーの度重なる妨害工作でトムのオペラは何度も中断を余儀なくされ、で、結局はステージ下の遥か彼方の奈落の底まで突き落とされて、最後はジェリーがステージに上って、最後を締める。そんだけ。…というものでありました。絵が可愛くなくて感情移入出来ない。…ということもあって、出来としては今ひとつですな。


「 ジェリーの日記 」

 ある日、トムはジェリーの部屋(家の壁にカマボコ形の穴を開けた、その内側)で彼の留守中に偶然、“ジェリーの日記”を発見したと。で、それを盗み読みしたと。けしからんですな。Web上に公開された“よしおの日記”とかならまだしも、人の日記を勝手に読むというのは一種の犯罪行為ですよね。人の日記じゃなくてネズミの日記だから、別にいいぢゃん。…という意見もあろうかとは思いますが、そういう考え方はよくありません。ネズミだって人間ですからね。…って、書いている本人、あまりよく意味はわかりませんが、とにかくまあ、“ジェリーの日記”には「今日、トムとゴルフをした。」とか、「今日、トムと花火で遊んだ。」とか、今となっては昔の話になってしまった過去の出来事が書かれているわけです。そして画面は海草シーン…って、ワカメとか昆布とか写してる場合じゃなくて、回想シーンになるわけですが、「トムとゴルフ」も「トムと花火」も見たことのあるネタですなぁ。「花火で遊んだ。」と言っても、実際にはダイナマイトみたいなものを互いに爆発させあうという、ほとんど自爆テロのような状態なんですが、しかしこの回想シーンはいったい何を意図しているんですかね?僕には遂に新しいネタが尽きて、過去の遺産で何とか1回分だけでも食いつなごうとする悪あがきとしか思えないんですが、例えば『塩通』でいう“じゃけっと・これくしょん”みたいな。で、さすがに単なる回想シーンだけでは良心がチクリと痛んだのか、新機軸として“動物愛護デー”という設定がなされております。すなわち、ラジオから「今日は動物愛護デーだから、動物を愛護しようね♪」という話が流れてくるんですよね。で、それを耳にしたトムは自分も動物であるにも関わらず、殊勝にも「今日くらい、ジェリーを愛護しなければならないカナ?」と考えて、花束やらプレゼントやらパイやらを用意するわけです。トムもなかなかいいところがあるじゃないっすか。が、“ジェリーの日記”を読み進んでいくうちに自分の失敗ばかりが書かれているのに腹を立て、プレゼントを蹴り、花束を捨て去り、最後には部屋に戻ってきたジェリーに向かってパイを投げ付けるという、なんともオトナ気ない結末がオチです。「ワケわかんねー。」という感じで不条理顔で肩をすくめるジェリー同様、いったいこの作品で何を訴えたかったのか、見ているほうもワケわかんねー。


「 忠犬ブル公 」

 タイトルからして、あの話かな?…と思っていたら、ぜんぜん違いました。ブルドックといえば準レギュラーと言えるような存在のナントカというキャラがいましたよね?アレ、何と言う名前でしたっけ?“スパイス”?…って、そんな香辛料みたいなのじゃなくて、“スパイク”。そうそう、ソレです。庭でよく馬鹿でかい肉とか焼いたりしてますよね。庭に穴を掘って骨を埋めたり。ウチでは犬を飼ったことがないのでよく知らんのですが、いや、遥か昔、賢いけど、臭い…という犬を飼っていたそうですが僕の記憶にはなく、よってよく知らんのですが、犬というのはそんなに骨を穴に埋めたがる生き物なんすかね?僕もかつて、折り合いのよくなかった上司の骨を山奥に埋めたりした経験があるのでその気持ちはワカランでもないんですが、それはともかく、この「忠犬ブル公」というのはスパイク絡みの話ではありませんでした。もしかしてこれ、始めてみるヤツじゃないっすかね?えーと、物語はこうです。ジェリーが通信販売のカタログを見ていて、それに載っていたブルドックを注文すると。かなり思い切った行動に出ましたな。僕も今、ネット通販で“裏DVDソフト”を買おうかどうか真剣に悩んでいるんですが、未だに踏ん切りがつきません。その点、ジェリーの場合は思い立ったら即断即決ですからね。その行動力はネズミながら天晴れ、甘茶ながらカッポレ…って、何だかよくわかりませんが、とにかくまあ、ジェリーはカタログでいちばん強そうなブルドックを選んでハガキを出して、どんな恐ろしいヤツがくるのかと震え上がるトム。犬にはからっきし弱いですからねぇ、トムくんは。トムヤンクンは美味しいですけどね。で、いよいよその荷物が到着し、大きな木の箱を見てトムくんは思わずちびりそうになるんですが、中から出てきたのはジェリーよりも小さいプチブルでありまして。ガックシ…と頭を垂れるジェリー、トムくんは俄然元気を取り戻し、「うぉっほほほほほ!」と笑って指を突きつけたところ、いきなりブルドックが腕に噛み付いて、肩の辺りまで毛が剥げてしまう…とまあ、書いてみるとさほど面白くもなさそうな感じになっちゃいましたが、事実、大して面白くはありません。お初にお目にかかるブチブルのキャラが今ひとつ可愛くなくて、感情移入しにくい。…というのがその理由かと思われますが、2作目から4作目まで、ここのところ3連敗ぢゃん?『トムとジェリー』の購入企画、もしかして失敗でしたかねぇ。。。


「 パパの教育 」

 今度こそ、まがう事なき“スパイクもの”でした。パパと言うのがスパイクで、その子供というのが登場します。しっかし、スパイクに子供なんかいましたっけ?1回分のネタのためなら平気で子供の1人や2人はつくっちゃう漫画ですのでさほど不思議ではないんですが、とにかくまあ、パパが息子に“犬の道”を説く…というのが物語の粗筋です。犬の道、すなわち犬道(けんどう)。犬道とは長崎と見つけたり…とか何とか、ワケのわからない教育を施すのでありましょう。いや、当時のアメリカでケンドー長崎の存在がそれほどメジャーだったとは思えませんけど。で、スパイクは息子に犬道の“三つの掟”を伝授します。すなわち、ひとーつ。“チンチン”と“伏せ”の芸で人間と仲良くなること。ふたーつ、庭に穴を掘って骨を埋めること。みっつ、ネコを驚かせること。中でも最後の“ネコを驚かす”というのがいちばん大切で…、と言ってるところにタイミングよくジェリーを追跡中のトムが現れて、じゃ、パパが見本を見せてやろう。…ということになるわけです。スパイクがネコを驚かせるテクニックというのは極めて単純で、ただひたすら「ワンワンワンワンワンワン!」と吼えるだけという“犬のおまわりさん”並みの芸のなさでありまして。それでもトムは驚愕のあまり、毛皮を50センチほど後方に置き忘れるほどの慌てようで(←ここのところ、言葉で表現するのが難しい)、とにかくまあ、すっ飛んで逃げて必死で木によじのぼる体たらくでありまして。いやあ、情けないですなぁ。ま、あまり人のこと…というか、ネコのことは言えませんけどね。僕も犬に対しては極めて脆弱でありまして、もし吼えられでもしたら半泣き状態になって、噛まれでもしたら号泣しちゃうことは必至。もしかすると号泣だけでは済まずに、昇給しちゃうかも知れません。…って、給料が上がればそれに越したことはありませんが、とにかくまあ、スパイクは息子の前でいいところを見せることが出来て得意満面、乾した麺は乾麺。じゃ、お前もやってみたいか?…ということになって、物陰にトムを呼び寄せると、「いいか。俺の息子が吼えたらすっ飛んで逃げて、木によじ登るんだぞ!」と言い含めるわけであります。トムはスパイクが恐いものだからその申し出を断ることが出来ないんですが、いやあ、情けないですなぁ。ま、僕が同じ立場でも、きっと言うことを聞いていたと思いますけどね。もし断ってスパイクの気分を害し、噛まれでもすれば給料が上がって大変ですもんね。で、スパイクJr.が「わんわんわんわんわんわん!」と吼えると、トムは驚いた不利をして必至の形相で逃げていくわけでありますが、その様子を見ていたジェリーが「わんわんわんわんわんわん!」と犬の泣き真似をして、あとはえーと、とにかくまあそういう展開になるわけですね。親の威厳とか、サヤインゲンとか、そういったものを思い起こさせて、実に教育的でよい作品だと思いました。おしまい。


「 果てしなき決闘 」

 次第に解説が適当になってまいりましたが、もうちょっとの辛抱です。このDVDには全部で14話収録されていて、今日はその前半を紹介する所存ですので、あと2つの辛抱です。で、「果てしなき決闘」。日夜、血糖値と果てしない戦いを繰り広げている糖尿病患者にとっては身につまされるタイトルでありますが、僕には関係ありません。尿酸値は高いんですが、血糖のほうは今のところ大丈夫です。で、「果てしなき決闘」。これはアレですな。絵が下手なほうの作品です。言い換えると“眉毛トムもの”ということになりますが、トムに眉毛なんかあったっけ?…と思って調べてみたところ、どうやらトムには“眉毛があるにはあるんだけど、さほど目立たないトム”と、“眉毛がゲジゲジで、あまり可愛くないトム”の2種類のトムがいるらしい。…ということが判明しました。“トムとジェリー多次元宇宙説”を裏付ける事象として興味深いところでありますが、“眉毛トム”は極めて初期の作品で、まだ作風がこなれてない為に絵がヘタクソである。…という次元の問題ではなく、プロデューサーとか作者とか、あるいは絵を書いている人自体が別人なんじゃないか?…という気がしてきました。それほど“眉毛トム”の諸作は絵が拙く、ストーリーのほうも概して面白くありません。例えばこの「果てしなき決闘」は、トムが鎖の先に鉄球を取り付けた器具を振り回してジェリーを追い掛け回すシーンから始まります。で、トムが胸毛のあたりから紙切れのようなものを取り出してジェリーに渡し、それを見たジェリーが胸毛のあたりから紙切れのようなものを取り出してトムに渡し、これで双方に何らかの合意が生じたようで、そこからいきなり決闘シーンが始まるわけですが、この“紙切れ”に関する説明がまったくないので、何がなんだかさっぱりわかりません。身内だけで分かり合うなって!…と、第三者としては思ってしまいますが、そういう意向をまったく無視して、決闘が始まります。ピストル対ピストル、フェンシング対フェンシング、大砲対大砲、弓矢対弓矢、パチンコ(ゴムで石を飛ばすやつ)対パチンコ(ゴムで石を飛ばすやつ)…と、様々な武器による決闘が繰り広げられ、いつものようにジェリーの圧勝…とはならずに、相打ちで引き分け。…という結果になることろが斬新といえば斬新なんですが、最後は再び冒頭のトムが鎖の先に鉄球を取り付けた器具を振り回してジェリーを追い掛け回すシーンに戻り、ジェリーが胸毛のあたりから紙切れのようなものを取り出してトムに渡し、トムはそれを破り捨てて交渉は決裂、トムが再びジェリーを追い掛け回して、“The End”って、何がなんだか、さっぱりよくわかりませんなぁ。。。


「 未来戦争 」

 始まった途端、「あちゃー。」と思いましたね。“眉毛トム”やん!この時点でこの作品に対する僕の期待度は地底300メートルくらいの深さまで沈んでしまったんですが、いざ物語が始まってみると、その“期待の無さ”はいい意味で裏切られました。いやあ、これはスペクタクルですな。西暦25XX年(詳しくは忘れた)という、思い切った時代設定。トムとジェリーは宇宙船のコックピットのようなところで操縦桿を操り、それぞれ“ねこロボット”と“ねずみロボット”のようなものを操るんですが、ディティールの細部にまでこだわったメカの描写は今日の目から見ても斬新でありまして、マニア心を激しく揺さぶります。で、ストーリーがまた素晴らしいですね。SFという今までにない設定が幸いして、あ、「人造ネコ」というのもどちらかと言うとサイエンティフィックな話でしたが、その遥か上をゆくヒューマンでスケール感の大きなストーリー展開は、まさにアカデミー賞長編アニメーション部門グランプリの最有力候補というところではないですかね?いや、思いっきり短編ですけどね。いかし、わずか10分足らずという短い時間に、よくぞこれだけのスリルとサスペンスと愛と感動を散りばめたものですな。作者の類稀なる才能にエールを贈ると共に、今回のこの原稿をこの作品で締めくくることが出来る幸運に、神に感謝を捧げたい気持ちで一杯です。

 …というようなこともなくて、実につまらん漫画ですな。“眉毛トム”はやっぱり駄目ですなぁ。ナレーションが無くて物足りない上に、眉毛。僕の心は次第に深く沈み込んで来ましたが、実はこのDVDには素晴らしい“隠し玉”がありました。それは何かと言うと・・・、と気を持たせておいて、この続きはいずれまた。

( つづく♪ )


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